谷保が"ふるさと"になる
宿泊体験を

一橋大学ゲストハウス運営サークル『たまこまち』
2019年10月25日 掲載

こだわるのは、地域コミュニティとのつながり

画像:谷保でゲストハウスはじめました

集合写真

2020年に向けて外国人観光客が急増中の東京だが、西東京に位置する多摩地域は観光業が盛んとはいえない。しかし、一橋大学がある国立・谷保エリアに目を向けると、谷保天満宮という由緒正しい神社もあれば、古民家での食事や、武蔵野野菜を栽培・収穫する農業体験もできるなど、観光地として発展できるポテンシャルは高い。都心にはない日本の田舎風景や生活文化を味わえる、エンターテインメント性の高いエリアなのである。その魅力に気づき、国内外に発信していこうと立ち上げられたのが、今回紹介する学生サークル『たまこまち』。2018年4月に設立され、一橋大学のほか上智大学や津田塾大学など複数の大学の学生も加わり、活動はスタートした。

その第一歩として企画されたのが、谷保エリアでの宿泊体験を提供するゲストハウス『ここたまや』の運営である。クラウドファンディングで資金を調達し、日本で問題となっている空きアパートを一軒まるまる改装。2019年4月にオープンした。こだわるのは、地域コミュニティとのつながりだ。"デジタルな時代に、アナログなつながりを"をキャッチフレーズに、ゲスト参加型のさまざまなイベントも開催している。"みんなでつくるゲストハウス"をコンセプトに内装のリフォームを一緒に行うDIYイベント、NPO法人くにたち農園の会が運営する体験型農園『くにたち はたけんぼ』で収穫した芋の鍋を囲む芋煮会、学生がガイド役を務める国立の街歩きツアーなど、宿泊無しの利用でも有意義な時間を過ごせるイベントも用意されている。

自分のふるさとは、いくつあってもいい

オープン後3か月間の利用者は70人とのこと。団体ではゲストハウスを民泊法に基づき運営しているため、180日/年しか営業できないことを考えると順調な出足といえるだろう。現在サークルの代表を務める沖田真衣さん(社会学部2年)に話を聞いた。

「私たちはゲストハウスを地域に開かれた場所にしていきたいと考えていて、今後も"人と人をつなげる宿泊体験"の提供に力を入れていく予定です。利用された方に"自分の家で過ごしているみたい""谷保が第二の地元になりました"と言っていただけた時は嬉しいですね。自分のふるさとは、いくつあってもいい。私自身23区で生まれ育ちましたが、今では地元より谷保の方が、むしろ居心地がいいくらいなので(笑)」

今後はゲストハウス運営に加え、ツーリズム開発も活動の柱にしていくという。谷保や国立のコミュニティと提携し、一橋大学で学ぶ留学生の意見を取り入れながら、外国人留学生や観光客向けに日本文化体験を提供するローカルツアーの企画立案が進められている。

サークルのメンバーは現在20人で、3つの組織に分かれて精力的に活動を行っている。外国人留学生との交流を通じて谷保の見せ方を考えるチーム、活動内容や提供できるサービスを周知してファンを増やすブランディングチーム。そして、谷保に根差した『たまこまち』となるべく、地域貢献活動に取り組むコミュニティチームがある。子どもたちに自然を身近に感じてもらおうと、広大な田んぼの中で開催される運動会はその一例である。チームリーダーを務める原拓未さん(法学部2年)はこう話す。

「谷保エリアには、地域コミュニティや隠れた地域の見どころがたくさん存在しています。しかし、それぞれが結びついていない状態なのです。『たまこまち』がすべてを結びつけるHUBとなり、言わば"谷保の観光インフォメーションセンター"のような存在になることができればと考えています」

神輿を担ぐ人たちの写真

羊とゲストハウスのメンバーの写真

地域活性化の先駆的なケースとして注目

沖田真衣さん

たまこまち代表 社会学部2年 沖田真衣さん

活動で忙しい毎日を送るサークルの面々だが、自身の成長にもプラスに働いているようだ。

「一橋大学に入学した時に、"全力で頑張ったと言えることをつくること"や"いろいろな人々の価値観を学ぶこと"を目標に掲げていましたが、『たまこまち』に参加したことで達成できたと感じています。活動を通して、協働しているNPO法人くにたち農園の会の方々をはじめ、さまざまなアプローチで多摩地域を盛り上げようと活動している"大人"の皆さんが大勢いるという事実を知りました。そのこと自体が私にとっては大きな収穫で、貴重な経験を積ませてもらっています」(沖田真衣さん)

「もともと自分は、どんなことでも1人でやり遂げたくなるタイプでした。しかし、『たまこまち』の取り組みは1人では成し遂げられないことばかりです。チーム力が大切であり、みんなでアイデアを出し合ってこそより良い方策が見つかります。自分のマインドが変わったことが大きな成長だと思います」(原拓未さん)

主体的に行動を起こし、多様な人々と協働し、新たなムーブメントをクリエイティブに創り出していく。そして、地域や人々に活気を与え、社会の課題を解決していく。『たまこまち』の活動には、今の日本に必要なエッセンスが詰まっているといえるだろう。日常から価値を生み出す地域活性化の先駆的なケースとして、今後も谷保エリアと学生たちの動きに注目していきたい。

原拓未さん

法学部2年 原拓未さん

CAMPUS LIFE

キャンパスライフ