ゼミ紹介
『大学案内2025』より
社会学部 佐藤ゼミ「ジェンダー・セクシュアリティ研究」
「性」の常識を疑い、新たな知を創造する
佐藤 文香 教授
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科より博士(学術)。中部大学人文学部専任講師、ハーバード・イエンチン研究所客員研究員などを経て、2015年より現職。著書に『軍事組織とジェンダー』(慶應義塾大学出版会、2004年)、『女性兵士という難問』(慶應義塾大学出版会、2022年)ほか。
ゼミではジェンダー・セクシュアリティ研究の文献講読を行いながら、性にまつわる「知」を探究しています。わたしたちは誕生時にあてがわれた性別にしたがって、家庭や学校、職場などさまざまな場面でその性別にそった扱いを受けます。男性/女性に期待される性役割や男らしさ/女らしさの規範に日々さらされることで、どのようなふるまいが「正常」で、どのような生き方が「普通」であるのかを学び、それらを疑う余地のない自明の「知」として自らのものにしていくのです。ジェンダー・セクシュアリティ研究は、わたしたちが「自然」だと感じている性にまつわる「知」の多くが普遍的でも絶対的でもないことを、文化的・歴史的比較の中で明らかにし、そうした「知」の背景や帰結を批判的に問い直します。
ジェンダー・セクシュアリティ研究は、女性やLGBTだけに焦点をあてた学問ではありません。人間の「標準」とされる男性も、「正常」とされる異性愛者も研究の対象となり得ます。また、ジェンダー・セクシュアリティ研究は、家族のように性差や性役割の存在がわかりやすく見える領域だけを扱うわけではありません。男性が担うことが当然と見なされてきた軍事や戦争、あるいはそこに性的な事柄が入る余地などないと思われてきたような国際関係といった領域も同じように研究対象となり得ます。
2019年にはゼミ生の課外活動の成果として、『ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた――あなたがあなたらしくいられるための29問』(明石書店)が出版されました。この本は、ゼミ生が友人や知人から投げかけられたさまざまな「問い」を集め、それに答えたQ&A集です。わたしたちは、自らと異なる世界観を生きる「他者」への想像力をもちながら、共に対話を続ける知的好奇心に溢れた学生を求めています。是非、みなさんも手にとって、こうした新たな知の創造者として、仲間に加わっていただければと願っています。
小目谷 藍美
社会学部3年
佐藤文香ゼミでは、ジェンダーについて研究しています。本ゼミでは、性売買から結婚、LGBTQ+など異なるテーマを持つ文献を1年間で10冊以上読むため、ジェンダーに対して多面的な理解やアプローチが可能となり、様々な分野における専門性が身に付きます。
また、学部3・4年生に加え、大学院生、著名な教授の方や海外大学の研究員の方もゼミに参加されるため、複眼的な視点から深みのある議論が行われます。
さらに、学生主体でゼミが進められるため、議論に積極的に参加する姿勢が養われます。文献やゼミ生同士の意見に対しても建設的に批判することが多く行われます。
社会全体でジェンダーに対する関心は高まっていますが、日本はジェンダーの分野においてまだ改善の余地があります。本ゼミを通じて、「自分のあたりまえ」「社会のあたりまえ」に違和感を抱き、解明することで、ジェンダー平等の達成への糸口が見出せることを信じています。