ゼミ紹介
『大学案内2023』より
社会学部 加藤ゼミ「歴史学(朝鮮近現代史)」
日常のモヤモヤから歴史と現在を読み解く
加藤 圭木 准教授
2014年一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。主著に『紙に描いた「日の丸」̶足下から見る朝鮮支配』、『植民地期朝鮮の地域変容』、『だれが日韓「対立」をつくったのか̶徴用工、「慰安婦」、そしてメディア』(共編)。ゼミ生がつくった『「日韓」のモヤモヤと大学生のわたし』では監修を担当。
現在、日本ではK-POPやドラマ、コスメ、スイーツなどの韓国文化が絶大な人気を誇っています。一方、日韓関係は「史上最悪」とされ、韓国への攻撃的な言動、いわゆる「嫌韓」現象も生じています。
このような中で「モヤモヤ」を感じる人が少なくありません。たとえば、韓国の芸能人が歴史問題に関して日本に批判的な立場をとることがありますが、「推しは日本が嫌いなのかも」とショックを受けた人もいるでしょう。「韓国が好き」と話したところ、友人や家族から否定的なことを言われ、違和感を抱いたという人もいるでしょう。
「モヤモヤ」と向き合うためには、歴史を学ぶことが大切です。歴史と聞くと、「暗記科目」とか、「現在とは関係ない」などと思うかもしれません。しかし、日本の朝鮮植民地支配は現在に影響を及ぼしています(「朝鮮」は韓国を含む朝鮮民族・朝鮮半島全体を指す言葉です)。歴史を学ぶことは現在の課題を考えることにつながるのです。
植民地支配下では多くの人びとの人権が踏みにじられました。被害者の人権は現在まで十分に回復されていません。今も朝鮮側から批判があるのはそのためです。そこで、このゼミでは、当時を生きた人びとの視点から歴史を見ようとすることを大切にしています。被害者の人生を知ることは、わたしたちの人権感覚を鍛え直す機会になるとともに、日本と朝鮮半島の新たな関係を作り上げるための出発点になると思います。
このゼミでは、韓国の現地調査や日韓学生交流を積極的に実施しており、韓国に留学する学生もいます。さらに、昨年度は、ゼミ生が執筆者となり『「日韓」のモヤモヤと大学生のわたし』を出版しました。この本では、上記のような「モヤモヤ」を抱えている人びとに向けて、歴史問題をわかりやすく解説するとともに、現代を生きるわたしたちが歴史問題と向き合っていく際の姿勢についても述べました。こうした実践的な活動もこのゼミの魅力です。
朝倉 希実加
社会学部4年
加藤圭木ゼミでは、朝鮮近現代史を中心としつつ、これと密接に関わる平和や人権、ジェンダーに関する現代日本社会の諸問題についても勉強しています。普段のゼミでは、ゼミ生の関心に基づき文献輪読を行い、それぞれが考えてきた論点を中心に議論しています。またコロナ禍で昨年度は行えませんでしたが、毎年ゼミ合宿では韓国を訪問しています。
昨年度は、ゼミの中で「日韓」や日本社会に対する「モヤモヤ」を語り合っていたことから発展し、有志のゼミ生で「モヤモヤ」をキーワードに朝鮮半島と日本の歴史に向き合うための入門書『「日韓」のモヤモヤと大学生のわたし』を出版するまでに至りました。ぜひ読んでみてください。また、オンライン刊行記念イベントを企画し、のべ1000人が参加してくれました。
このようにゼミ生一人一人の興味を大切にし、ゼミ生同士で活発に語り合い、議論することができる場になっています。