ゼミ紹介

『大学案内2021』より

社会学部 赤嶺ゼミ「食生活誌学・食と環境」
食から現代社会の絡まりあいを読み解く

赤嶺 淳  教授

赤嶺 淳 教授

1996年、フィリピン大学大学院修了(フィリピン学)。名古屋市立大学教員を経て、2014年から現職。著作に『ナマコを歩く』(2010年)、『鯨を生きる』(2017年)、『生態資源』(2018年、共編著)、『マツタケ』(2019年、単訳)など。

ゼミ風景

「食生活誌学」は、わたしの造語です。意識するところは、英語圏でFood Studiesと呼ばれる学問です。食の研究は、農学や家政学、環境学などの単一の学問分野におさまらず、学際的なアプローチが必要となります。Food Studiesが複数(studies)になっているのは、このためです。
わたしは、「食」という日常生活の変化に着目して、人間と環境とのかかわりの変容過程をあきらかにし、地域/地球社会の将来を展望したいと考えています。たとえば、1950年代後半から1970年代初頭にかけての高度経済成長期の前後で、わたしたちの食生活はどのように変化したのでしょうか?そのことによって、東南アジアをはじめとする国ぐにの環境にどのような影響を与えてきたのでしょうか?
現在、家庭に冷蔵庫が2つあることも珍しくないはずです。しかし、1965年、冷蔵庫は、わずか2世帯に1個しか普及していませんでした。ところが、1971年には90%の家庭に普及したように、この6年間に家庭の食生活は激変しました。その最たるものは、海外の港から冷凍されたマグロやエビが運ばれてきて、各地のスーパーで解凍・販売されるといったコールドチェーンが確立したことです。もちろん、日本各地をつなぐ高速道路網の整備があってこそのチェーンです。輸送する際のエネルギーも必要ですし、コールドチェーンの整備と維持に投下されるエネルギーも膨大なものです。こうした一連の変化ひとつをとってみても、食を切り口に社会変容を研究する、裾野の広さがわかるでしょう。
わたしたちは、ひとつの食材の歴史を追いながら、生活環境の変容過程を具体的にあきらかにし、現代社会を複眼的に見る眼を養うことを目指しています。新聞や文献を読むことも必要ですが、スーパーを覗いてみたり、生産者や流通・小売りに携わる人びとの声を聞いたりすることーーフィールドワークーーも、研究に不可欠です。


佐藤 冬佳

佐藤 冬佳

社会学部4年

赤嶺ゼミでは、主に食物が市場に現れるまでの過程に関しての議論を通じ、その裏側にある労働問題・環境問題などの様々な弊害について学んでいます。毎回のゼミでは、毎週一冊課題図書を読み、ゼミ生がレジュメを作成し持ち寄った論点について発表する形式をとっています。自分たちが普段の生活で目にし、口にする食べ物の生産の裏側には、容易に解決できない、複雑に様々な利権と絡まりあった問題が隠されています。そうして歴史的に根深い問題が起きつづけている事実に社会的正義とは何かを考えさせられます。
夏のゼミ合宿はゼミ生が自分たちで「何をどこでどのように、何を目的にして調査するか」を一から計画します。今年は山梨のワインについて地域振興への利用について、インタビュー調査を行いました。このように身近なものからゼミ生の興味関心に基づき、様々な問題について幅広く取り扱っているのは「社会学部ならでは」の魅力あるゼミだと思っています。
2019年10月撮影

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