ゼミ紹介
『大学案内2024』より
経済学部 井伊ゼミ「医療経済学」
健全な批判的思考力と対話力を伸ばすゼミ
井伊 雅子 教授
1993年ウィスコンシン大学マディソン校経済学Ph.D
政府税制調査会委員、日本放送協会(NHK)経営委員、東京都医療審議会委員。
主著に「新医療経済学」(共著、日本評論社、2019 年)、「フィナンシャル・レビュー:過剰医療と過剰医療の実態」(編者、財務総合研究所、2022年)など。
井伊ゼミでは、医療経済学の主要なテーマを学びます。毎回のゼミは、前半は英語で、後半は日本語で行なっています。
ゼミ生は、事前に英語のpodcastを聞き、英語での議論の準備をしてゼミに参加します。 私は、アジア公共政策プログラムも担当しており、そこで学ぶアジアの中央銀行、財務省、統計局などの若手官僚たちも議論に参加します。
後半は、医療経済学に関する書籍を読み、議論します。医療経済学は、医療制度を扱う経済学の応用分野です。医療保険や医薬品など、医療にかかわるさまざまなことを経済学の手法を用いて分析します。ゼミでは、行動経済学と意思決定理論を、実際の医療政策へ応用する方法を学んだり、統計を用いたデータ分析方法を学んだり、毎年異なるテーマを設定しています。
今年度は日本の医療保険制度について学んでいます。先日、2021年度は大企業の健康保険組合の半数が赤字だったという報道がありました。65歳以上の高齢者医療制度への拠出金が増加しているからです。団塊の世代が75歳を超える2025年度以降は、拠出金はますます増加し、現役世代の公的保険料の負担が増えます。毎月の給与から保険料を支払いますので、保険料の増額は自分ごとです。日本の企業の競争力という視点からも、医療保険制度の仕組みを学ぶことはとても重要です。
一橋大学の経済学部では、ミクロ経済学やマクロ経済学、統計や計量分析など基礎能力を身につけるカリキュラムになっています。ゼミでは、そうした基礎的な能力をもとに、論理的に政策議論ができるようになることを目指しています。
医療経済や医療政策を議論するときには、経済的な側面だけでなく、倫理的なこと、文化や歴史などへの洞察も不可欠です。大学生活では、経済学以外の本を読んだり、映画を見たり、他文化への関心も持ってほしいです。ゼミは、相手の立場を理解しながら、自分の考えを的確に伝えるレーニングの場でもあります。
坂田 麟之介
経済学部3年
井伊ゼミでは医療や健康について経済学のツールを用いて分析を行う、「医療経済学」を勉強しています。あまり聞かない学問ですがコロナ禍やポストコロナ社会で重要な役割を担う学問です。私は親が医療関係者ということもあり、コロナ禍における医療制度への懐疑的な視点があったことから、井伊ゼミを選びました。
このゼミでは3年生と4年生が共同で、英語のpodcastの内容について議論しています。また教科書も輪読しており、2022年度は医療保険制度の現状や問題点について学んでいます。現状の医療保険の構造は受益と負担の関係が崩れかけており、より良い制度の構築にはどうするべきかについて話し合っています。
井伊ゼミは議論が活発で和気あいあいとしたゼミです。先生からも議論の中で的確な情報を提供していただいており、議論を通して医療と経済の幅広い知識や知見を学ぶことができるのがこのゼミの魅力です。