経済学部 財政学・公共経済学/佐藤 主光ゼミ

『HQ2023』より

佐藤主光氏の写真

佐藤 主光 もとひろ 教授

経済学というツールを駆使し、
社会課題を解決するための最適解を導き出す

さまざまな経済現象を研究対象とし、論理的に説明するための法則や法則を裏付けるエビデンス(証拠)を見出す。そんな経済学の中でも、"現実に近い経済学"と佐藤教授が語る財政学・公共経済学。政府が関与する個人や企業の経済活動を、より円滑にするための政策について研究する学問といえる。望ましい租税のあり方を考え、費用対効果の高い公共事業について検討するなど、佐藤ゼミでは社会課題の解決につながる政策の立案に取り組んでいる。財政学や公共経済学の理論を使いこなし、最適解となる政策を導き出すための鍛錬もゼミ活動の醍醐味となり、学生にとってはハイレベルな考察力を養える場となっている。

政策に対する問題意識が
卒業論文作成に向けた出発点

ゼミ中の写真

財政学と公共経済学は、政府が行う経済活動を扱うという点で同義といえる。財源をどのように調達し、どうすれば効果的な支出を行えるか。資源配分の効率性、所得分配の公平性、経済の安定性などの観点から検討を重ね、具体的な政策へと落とし込まれる。

佐藤ゼミには3年生9人と4年生7人が所属している(2022年度)。個々の関心事はさまざまだが、共通点としていえるのは政策に対する問題意識が高いことだ。

3年次から開講されるゼミで最初に取り組むのは、基礎知識を得るために行われるテキストの輪読である。財政学や公共経済学に関する英語文献を取り上げ、質疑応答や議論を通して理解を深めていく。そして、夏休み前には4年次から本格的に取り組む卒業論文のテーマを決める。夏休み期間を利用して個々の関心事を掘り下げ、佐藤教授から与えられる課題にじっくりと取り組めるからだ。夏休み明けの秋学期からは、課題の途中経過を発表しながら卒業論文作成に向けて準備を進めていく。

発表の場には4年生がコメンテーターとして参加する。ゼミの時間外にも個別指導を行うなど、3年生にとっては心強い存在となっている。学年を超えた交流や知の伝達を重んじる佐藤教授にゼミ活動の狙いを尋ねた。

「卒業論文は最終成果物といえます。しかし、そのアウトプットに至るまでのプロセスにこそゼミで学ぶ価値があると考えています。自分の問題意識はどこにあるのかを探り、研究したいことを突き止める。そして、実証や理論的な分析を経て成果を周囲に伝わるように発表する。そうした学びや経験が学生に成長をもたらします」

〝自ら考える力〞を養うことが
社会を支える側に立つ礎となる

ゼミ中の写真

学生の研究対象は多種多様で、卒業論文のテーマもバラエティに富んでいる。"サイクリング"に注目した都市インフラ整備や健康増進、"ご当地アイドル"を登用した地方創生の推進など、ユニークな政策に落とし込まれているケースは少なくない。このことからも、社会のあらゆる事象が財政学や公共経済学とつながっており、佐藤教授が"現実に近い経済学"と語る理由が分かる。

"学術と実践をつなぐ新しい公共"を唱える佐藤教授の指導は、学生からも高い支持を得ている。佐藤教授は、政府税制調査会や規制改革推進会議等で委員を務め、優れた論文や著書に授与される『エコノミスト賞』(毎日新聞社主催)や『日経・経済図書文化賞』(日本経済新聞社・日本経済研究センター共催)応用研究で日本の経済・社会問題の解決に貢献した経済学者に送られる『日本経済学会石川賞』を受賞するなど、研究者として優れた実績を持つ。学生に求められる最終成果物のレベルは高いが、それだけ大きな成長を期待できることも佐藤ゼミが選ばれる理由となっているようだ。佐藤教授に学生の育成方針を伺った。

「学生に養ってもらいたいのは"自ら考える力"です。学術と実践をつなぎ、社会を支える側に立ってほしいと願っています。そのためにも、経済学というツールを使いこなす術を身に付けてもらいたいと考えています」

Student's Voice

理論と実証を往来する重要性に
気づかせてくれる経済学です

北條 愛さんの写真

北條 愛さん

経済学部3年

著名な経済学者の思想や理論を学ぶ。それが経済学に対する私の印象でした。しかし、2年次の授業で公共経済学と出合い、"社会の果実になる"と感じたことが佐藤ゼミを選ぶ動機になりました。佐藤ゼミでは学生が主体となって活動を進め、研究テーマも自分の関心事から決めることができます。私が現在研究しているのは文化政策です。もともと好きな映画という芸術文化に絡め、産業の発展を妨げる労働環境の改善や、人材の育成に有効なコンテンツを発信できないかと可能性を模索しています。毎週ゼミで行われる各自の研究報告会で、医療政策や環境政策など、あらゆる領域の事例や考察の視点を得られることも佐藤ゼミの魅力だと思います。公共経済学を含めた経済学全般を学んで感じるのは、「どうすれば社会をより良い方向に導けるのか」という問題意識が根底に流れているということです。一方で、理想の追求で終わる夢想家にならないことが重要だと考えています。「経済学というのは、理論と実証を往来することが大切で、どちらかに偏ってはいけない」これは佐藤先生がよくおっしゃることですが、その重要性を如実に感じられるのが公共経済学だと思います。

社会課題を俯瞰的に捉え、
構造的に考える力が養われました

田中湧真さんの写真

田中湧真さん

経済学部4年

高校時代、日本の社会保障に関心を持ちました。将来の財政について本気で考えなければならないと思い、佐藤ゼミで学ぶことにしました。政府の税制調査会等で実務経験が豊富な佐藤先生の考えに触れたいと思ったのです。現在取り組んでいる卒業論文では、効率性の公平性のトレードオフが論争になる所得税の税率について、経済学的知見からエビデンスに基づいて考える最適課税論の研究を行っています。佐藤ゼミでは3年次の夏には研究テーマを決めますが、それまでの約4か月間は自分の関心事を探索する期間になります。数々の論文を読み解き、自分の解釈を発表しながら議論する。他の学生の発表を通して、自分とは異なる経済学のフレームワークの使い方に気づく。そうしたプロセスを踏みながら研究テーマを精査していけるので、卒業論文の完成度を上げることにもつながると思います。財政学を学んで感じるのは、どのような社会課題にも通じる学問だということです。社会保障、労働環境、貧困など、あらゆる問題は連鎖して生じており、一面だけを注視しても解決策は見出せません。そうした意味でも、ゼミ活動を通して社会課題を構造的に考える力が養われたことは大きな収穫だと思っています。どのような物事と対峙する際も思考の軸になっており、あらゆる領域に活きる能力だと実感しています。

2022年度卒業研究(論文)テーマ

  • 税と社会保障の一体改革(所得税)
  • 教育経済
  • 産業クラスター政策と地方創生
  • 持続可能な経済成長
  • コンパクトシティとLRT・BRT
  • 教育のデジタル化
  • 医療のDX化
  • 都市政策とコンパクトシティ

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