経済学部 「国際経済学Ⅰ」

『HQ2022』より

杉田洋一准教授の写真

杉田洋一准教授

グローバル化による国の発展メカニズムを、
英語で学び、因果関係の読解力を鍛える

経済におけるグローバリゼーションは、今に始まったことではない。18世紀に起きたイギリスでの産業革命に端を発したとされ、21世紀に入ると旧共産圏諸国やアジアの途上国も輪の中に入った。グローバル化による国の発展には、どのようなメカニズムが働いているのか。その検証を通じて、日本と世界の経済的な結びつきについて深く学修できるのが、「国際経済学Ⅰ」である。経済学部が国際人養成を目的として提供する「GLP(グローバル・リーダーズ・プログラム)」への参加をサポートする授業でもあり、"英語で学ぶ"という点でも注目したい。

国際貿易論を軸として、理論モデルや
データを用いて経済現象を分析

画像:グラフ

国際経済学とは、多国間にまたがる経済現象を分析対象とする経済学である。この授業では、ミクロ経済学に分類される国際貿易論を軸として、世界規模で経済統合が進む背景や仕組み、もたらされる国全体の所得のレベルと分配の実状、グローバル化された経済における政策介入の有効性などを学修する。指導にあたる杉田准教授に、授業の特徴について話を伺った。

「国境を越えた財・サービス・人の移動を中心とした経済活動に焦点を当てる授業です。なぜグローバル化によって経済の発展は起きるのか、そのメカニズムを理解するとともに、グローバル化の背後にある政治経済学を分析します。授業では、まず比較優位や規模の経済に基づく基本的な国際貿易モデルとデータによる実証的証拠を学修します。それらの理論を用いて、関税などの貿易政策の効果や、GATT(関税及び貿易に関する一般協定)やWTO(世界貿易機関)などの国際協定の役割を分析していきます。また、経済地理学、グローバルバリューチェーン、多国籍企業と外国直接投資など、経済のグローバル化における象徴的なトピックについても議論し、理解を深めていきます」

「国際経済学Ⅰ」の授業は、経済学に関する基礎科目をすでに履修した3年生を主な対象とし、2021年度は春学期に開講された。授業は、コロナ禍の影響を考慮してビデオ・オンデマンド(録画)配信という開講スタイルが採られた。全13回の授業で構成されているが、最大の特徴といえるのが"英語"で講義が行われることである。どのような狙いやメリットがあるのか、杉田准教授に伺った。

自ら知識を獲得し、解釈し、
学び続ける力が養われる経済学

「経済学という学問は英語が共通語です。日本語で翻訳や解釈された二次情報ではなく、オリジナル情報に直接リーチしてもらうために"英語で学ぶ"ことが有効です。この授業で扱う国際経済学においても、過去20年間で研究の手法が大きく変化しましたが、それらの研究成果を日本語で書かれた教科書だけで学ぶことは不可能です。授業では、世界中の経済学者による研究論文や分析コラム、国際機関による分析レポートを活用します。これらの英語の一次情報源に触れることで、学生には、学ぶ際に必要な情報を、グローバルな情報源から自ら探すことができるようになってほしいと考えています」

受講する学生に感想を聞いたところ、「慣れてくると英語の方が経済現象をとらえやすい」という声もあり、授業での取り組みがリーディングのトレーニングにもなっている様子だった。最後に、学生に期待する成長について杉田准教授に尋ねた。

「自ら知識を獲得し、解釈し、学び続ける力を身につけてほしいと思います。また、経済学的な視点や考え方、理論モデルやフレームワークを学ぶことで、現実世界で起きているあらゆる現象や問題についても、その因果関係を読み解けることを期待しています」

(授業の内容)

Week 1:Introduction

Week 2:Gravity Equation and Evidence for Gains from Trade

Week 3:Partial Equilibrium Analysis of International Trade

Week 4:Theory of Comparative Advantage

Week 5-8:Ricardian Model of Comparative Advantage

Week 9-10:The Heckscher-Ohlin Model of Comparative Advantage

Week 11-12:Scale Economy and Gains from Variety

Week 13:Introduction to Advanced Topics

  • Economic Geography
  • Global Value Chains
  • Multinational Firms and Foreign Direct Investment

Student's Voice

国際経済を考える上で
根幹となるモデル・理論・知見が
得られる授業です

清野紘大さんの写真

清野紘大さん

経済学部3年

私自身は海外経験もなく、英語が得意というわけではありませんでした。しかし、一橋大学に入学した動機でもあった「国際経済について詳しく学びたい」という思いから「国際経済学Ⅰ」を履修しました。2021年度はビデオ・オンデマンド(録画)配信で開講されたこともあり、内容が難解な部分も含めて、英語で理解できるまで繰り返し見直しながら学修しました。授業では国際経済を考える上で根幹となるモデル・理論・知見を得ることができ、さらに世界経済の最新トピックや経済と国際政治との結びつきなどについても触れていただきました。私が学びたかったことともマッチしており大変満足していますし、また英語で展開されている最前線の研究に英語のまま触れることができたという点でも有意義な授業でした。さらに授業の履修を通じて世の中の経済や政治の内容に対する判断材料を得ることができ、そこから自分なりの考えをより深めることができたと思っています。その意味で、国際経済に関心のある学生だけでなく、アカデミックな英語に触れてみたい方・社会制度や政治に関心のある方にもぜひチャレンジしてほしい授業だと感じています。

"英語を学ぶ"自分から、
"英語で学ぶ"自分に
橋渡しをしてくれた授業です

浅井悠輔さんの写真

浅井悠輔さん

経済学部3年

高校時代に長期間の海外語学留学を経験していたため、英語で学ぶことに不安はありませんでした。自分と世界を経済学でつなぐ授業を受けたいと思い、「国際経済学Ⅰ」を履修しました。また、卒業後は世界を舞台に活躍できる仕事に就きたいという希望があるため、この授業を通して多国間での貿易に携わる際に役立つ知識や視点を得たいと思いました。

授業内容には、大きな手応えを感じています。経済のグローバル化と国の発展の因果関係についても、自分の主観だけで見解を述べるのではなく、エビデンスに基づいて、論理的に説明できる力が養われたという実感があります。また、日常生活でも変化がありました。世界経済に関するニュースやトピックを英語で読む習慣が身につき、専門用語もスムーズに理解できるようになりました。「国際経済学Ⅰ」は、高校までの"英語を学ぶ"自分から、国際経済で役立つ実務を"英語で学ぶ"自分へと橋渡しをしてくれる授業だと思います。