商学部 経営戦略論・経営組織論/佐々木 将人ゼミ

『HQ2024』より

佐々木 将人氏の写真

佐々木 将人 准教授

企業行動を理論的に説明するための研鑽を通じて、
見えない社会現象を解明し、問題提起する力を養う

企業がビジネスを展開する中、業績が上向かないとすれば、それは経営戦略に原因があるかもしれない。また、働く社員のモチベーションが低い場合は、経営組織から見直す必要もあるだろう。「なぜ高い業績を上げ、競争優位な状況を築き上げることができたのか」「どのような施策が従業員の労働意欲を高め、効率的かつ機能的な組織づくりを可能にしたのか」。こうした問いに答えるさまざまな説明の枠組みを提供してくれるのが、佐々木ゼミで研究が行われている「経営戦略論」や「経営組織論」である。

ある企業の成功が周知の事実であっても、その理由は必ずしも明らかではない。十分な説明をするためには、企業戦略の定石や競争の仕組みについても理解しておく必要がある。佐々木ゼミでは、理論に基づいて企業行動を説明し、さらには独自の視点でとらえた分析ができるように指導が行われている。学修を通じて獲得できるのは、経営戦略や経営組織に関する体系的な専門知識だけではない。見えない社会現象を解明し説明できる能力であり、何かを変革するために自ら問いを立てられる能力である。

自ら問いを立て、答えを構築できてこそ、
企業や社会で変革を起こせる

佐々木ゼミは、商学部の経営学領域における3、4年次の後期ゼミとして開講されている。3年次にまず学修するのは、基礎知識となる経営戦略や経営組織に関する理論である。学んだ理論を「どのように活用するのか」「起きている現象をいかに説明できるか」に重点を置き、テキストの輪読を通して理論の理解に取り組む。

2023年度のテキストは『離脱・発言・忠誠ー企業・組織・国家における衰退への反応(アルバート・O・ハーシュマン著)』が用いられた。経済学と政治学を組み合わせた組織マネジメントの理論が展開され、組織を再生するための手掛かりが示されている。企業行動に影響を与える社会現象を説明するための枠組みとして学修し、抽象度を上げることで視野を広げていく。取り組む学生に対して期待することを佐々木准教授に尋ねた。

「企業行動というものを、戦略という事業展開の側面と、組織運営という多くの従業員をマネジメントする視点から理解してもらうことです。そのための専門知識の修得に加えて養ってほしい能力があります。その一つが、経営に影響を与えるさまざまな事象を説明できる力です。もう一つは、自ら問いを立てる力です。研究活動においても企業で実務に携わるときにおいても、何かを変革していくには問題意識が欠かせません。それをもとに、立てた問いの答えを構築できるようになってほしいと願っています」

ゼミ風景1

ゼミ風景2

興味関心のある現象に対して
多面的に光をあて、真相をあぶり出す

テキストの輪読と並行して、代表的な日本企業の事例を題材としたケース・ディスカッションにも取り組む。事実を把握した後、理論に基づいて企業行動の背景を推察し、議論や分析を重ねていく。そして、集大成となる4年次の卒業研究では、学術的にも社会的にも意義のある問いを立て、論文作成に注力する。個々の興味関心が出発点となるだけに、論文のテーマも実に多彩である。佐々木准教授に、指導を行う際に心掛けていることを聞いた。

「学生とは最初に〝なぜ選んだテーマに興味関心があるのか〞を擦り合わせます。見えている表面上の現象だけで判断をせず、真相をあぶり出すことに論文の意義があるからです。社会科学とは、さまざまな社会現象を可視化すること。物事を見る視点を増やし、多面的に光をあててもらいたいと思っています」

社会科学の中でも商学は、自分自身が企業から商品サービスを提供されている消費者の目線で学べるため、非常に身近な学問といえる。そして経営戦略や経営組織は、社会に出れば必ず接点を持つ領域でもある。そうした意味でも、佐々木ゼミで学ぶことは社会に出る前に行う有効な知のトレーニングになるだろう。

ゼミ風景3

ゼミ風景3

Student's Voice

普段使用する家電製品に注目し、
価格帯が与える影響を考察しています

ムンクトルナムーンさんの写真

ムンクトルナムーンさん

商学部4年

ビジネスにおいてマーケットや顧客層が変化していく現象に興味がありました。そうした現象に私たち消費者の大多数は気づきません。変化を企業がどのようにとらえ、経営戦略に反映させているのかを研究したいと思い、さまざまな企業行動をケーススタディとして学べる佐々木ゼミを選びました。卒業研究では、成熟化した家電市場の中で売り上げを伸ばしている高価格帯のヘアドライヤーに注目し、価格帯というものが好影響を与えた要因について考察しています。今、起きている現象の真相に迫るために身につけた分析手法を、研究成果につなげていきたいと思っています。

どんな興味関心に対しても真摯に向き合い、
研究として昇華させる助言をくださる先生です

大川 温生さんの写真

大川 温生

商学部4年

ベンチャー企業に興味があり、定量調査の手法を修得したいと思っていたため、佐々木先生のゼミの活動を通して知見を身につけたいと思いました。卒業研究では、ベンチャー企業とそれを取り巻く環境からなるスタートアップエコシステムについてリサーチしています。佐々木ゼミの魅力は、研究に励む学生と真摯に向き合ってくださる先生の姿勢にあると思います。興味関心のある研究領域が先生の専門外であっても、学術的かつ論理的に正否を判断して助言をもらえます。研究者の道を進むことを視野に入れて学ぶ私にとって、非常に恵まれた環境です。

カバーする領域が広範にわたるので、
自分の好きな研究対象が見つかるはずです

酒井 昌盛さんの写真

酒井 昌盛

商学部4年

経営というものに漠然とした興味があったため、商学部を選びました。佐々木ゼミを選んで良かったと思うことは、戦略や組織、業態の変化やイノベーションなど、経営というものを多角的に考察できることです。カバーする領域が広範にわたる経営学の面白さを実感できるゼミであり、活動を通して、自分の学びたい領域を見つけることができました。私は卒業研究として、インドネシアの伝統的小売業に関する調査を行っています。経済発展が進む中、なぜ屋台や旧態依然とした個人商店をはじめとする伝統的小売業が今も生き残っているのか。その要因やメカニズムをさまざまな側面から探っています。

ゼミ生による卒業論文テーマ(抜粋)

  • グーグルから見る自動運転のこれから
  • ユーモアがリーダーシップに与える影響
  • アートを用いた地域ブランドの構築と地域ブランド・ロイヤリティに与える影響
  • 新時代のCRM ─ソーシャルメディアの可能性─
  • 『健康経営が企業イメージに及ぼす影響:テキストマイニングを通した分析』
  • eラーニングに対する既存教育産業の優位性
  • ソーシャルゲームの収益性はどうやって生まれるのか
  • アメリカにおけるDtoC ブランド企業の成功要因の考察
  • テレワークがもたらすコミュニケーションの変化によるリーダーシップについての考察
  • ラーメンコンプレックスの長期的成功要因

ABOUT

一橋大学について