一期生が語る。私がソーシャル・データサイエンス学部を選んだ理由
2023年7月3日 掲載
2023年4月に開設したソーシャル・データサイエンス学部・研究科に一期生たちを迎え、この度新入生を代表して3名の学生に志望理由、学びに期待すること、将来のキャリア、受験対策など...、さまざまな視点から語ってもらいました。
データサイエンスを学んで、デジタルの世界でキャリアを積みたい
修士課程1年
劉 碩さん
大学で会計学を学び、北京にある日本の金融機関に勤めていた劉碩。新しいデジタルの世界で仕事をしたいと考えた劉は、母国・中国の大学院ではなく、研究に力を入れている一橋大学のソーシャル・データサイエンス研究科を志望した。受験の時点ですでにハードルの高さを実感した劉だが、実際の授業はそれ以上に難易度が高いと語る。その分、自身がどのような仕事にチャレンジしたいかというキャリアパスがはっきり見えてきているようだ。
金融機関での勤務を経て、新しい仕事に就きたいと考えるように
中国地質大学で会計学を学んだあと、私は北京にある日系の大手金融機関で働いていました。小さい頃から日本のアニメやドラマを観て育ち、独学で日本語を学んでおり、日本に親近感を持っていたからです。
3年の企業勤務を経て、もっと新しい、データサイエンスに関わる仕事がしたい...と考えるようになったのです。データサイエンスの仕事に就くには学び直す必要がありました。学び直すのであれば、環境を変えて学びたいと思い、日本の大学院を検討していた時に、一橋大学にソーシャル・データサイエンス研究科が新設されることを知り、受験しようと決めたのです。
独学でPythonを学び、難易度の高い情報学、統計学の試験に挑む
中国地質大学は理系の大学です。高校の頃も理系でしたので、受験でも自分のバックグラウンドが多少有利に働くのではないかと考えていました。また、学部生時代にはC言語も学びました。それでも、ソーシャル・データサイエンス研究科の試験はとても大変でした。
筆記試験は「社会科学」と「統計学・情報学」の二つがありました。社会科学の試験対策として経済学の勉強をしていましたが、それでも問題を解くのは難しかったですね。さらに難しかったのが、統計学と情報学です。特に情報学について、独学でPythonも習得していたのですが、試験ではかなり苦戦した記憶があります。
ブートキャンプで3つの領域を広く学ぶことからスタートできる
現在興味を持っている授業は、「ベイズ統計学」と「機械学習」ですね。統計学の授業のレベルは、受験の時よりもさらに高いように感じます。機械学習のほうはまだそれほど難しさを感じませんが、ベイズ統計学についてはRやPythonを学んでおいたほうが良さそうです。ただ、実際の授業がスタートする前に「ソーシャル・データサイエンス・ブートキャンプ」があります。これは「統計学」「情報・AI」「社会科学」という3つの領域の準備コースにあたるもので、広く概要を学ぶことができます。
ちなみに研究科の大学院生は現在22名で、留学生は私を含め3名在籍しています。全員が中国人女性なので、とても心強いですね。
ITコンサル、またはグローバル企業でデジタルマーケティングに
金融機関で働いていた頃は、データサイエンスの仕事といっても漠然としたイメージしかありませんでしたが、今は具体的なイメージが湧いています。データサイエンスを学ぶことで、修了後はシンクタンクやコンサルティングファームでITに関する仕事に就くか、グローバル企業で海外向けのデジタルマーケティングに携わるか、いずれかを選択できたら嬉しいです。
複雑に絡み合った社会課題を解決するために、数理的アプローチを学びたい
学部1年
早田 宥紀さん
文系出身の早田宥紀は、高校時代の授業で、社会課題について調査・レポート作成を行う機会を得た。そのプロセスでデータサイエンスによる数理的アプローチを学ぶ重要性に気づく。受験では数学でアドバンテージを得られないと判断、国語・英語で勝負をかけ見事合格。入学後、早々に行われた学部生同士のグループワークで新設学部の雰囲気をつかみ、現在はさまざまな授業を履修。社会課題の解決方法を身につけるために学び続けている。
社会課題は、自分が考えていたようなシンプルなものではなかった
高校2年生の時に、学校で社会課題についてのテーマを一人ひとり決めて1年間調査し、レポートにまとめるという授業がありました。私は都市部への人口集中問題に関心があったので、「テレワークで地方に移住」という切り口でいろいろ調べてみたのです。はじめは、仕事をオンライン化できるなら地方に移住すればいい、と短絡的にとらえていました。しかし、書籍や論文を読み進んでいくうちに、問題はそれほどシンプルではないことに気づきました。労働環境の整備、通信インフラの整備、移住者を受け入れる地域の事情...さまざまな要素が絡み合っていますから。そこでデータサイエンスによる数理的アプローチを学ぶ必要があると感じました。
ソーシャル・データサイエンス学部は、単にデータサイエンスを学ぶだけではなく、その知見が社会にどんな影響を与えるかに重点を置いています。その点に魅力を感じて志望しました。
総合問題では、論理的思考が問われる
「総合問題」については、サンプル問題を参考にしながら、出題されそうな分野について勉強しました。具体的な対策としては、経済学者や数学者の経歴を調べたり、統計学についてはゲーム理論などの統計分野についても関連知識をネットで検索したり...。
数学の配点が高いので、数学は集中的に勉強しましたが、文系の私は理系の受験生に対抗しきれないと判断しました。とにかく遜色のない点数を取ることに注力して、あとは英語と国語で確実なアドバンテージをとれるよう勝負しました。総合問題はデータサイエンスの要素やプログラミングで用いるような論理的思考力の要素が強かったです。これらに慣れ親しんでおいたほうが有利であることには間違いないですが、受験生の大半は大して出来は変わらないと思いますし、過度に不安になる必要はないと感じます。それにしても、これほど競争率が上がるとは予想していませんでした。
グループワークなどで、学生同士がお互いを知る機会に恵まれている
データサイエンスを学ぶ前に、グループワークなどを通じて、学生同士がお互いを知る機会があるのが嬉しいですね。授業でも毎回ディスカッションがあり、コミュニケーション能力が鍛えられるのもすごくいいと思います。授業では必修科目の「AI入門」や「線形代数」のほか、選択必修科目で経営学・経済学系の「社会科学入門」などを受けているところです。
私は高校時代に人口集中問題を調査したように、プラスチックごみなどの環境問題、都市問題などに関心を持っています。3年次にはPBL(Project-Based Learning)演習があるので、このような社会課題をどう解決すべきかを考えていきたいですね。そして将来は、シンクタンクやコンサルティングファームなどで、実際の社会課題の解決に取り組むことが目標です。
ソーシャルサイエンスとデータサイエンスを融合させた学びを求めて
学部1年
友成 栄斗さん
高校時代にプログラミング部でPythonを使い、文化祭での集客に役立てた経験を持つ友成栄斗。その経験を社会に役立てるためにソーシャル・データサイエンス学部を志望する。授業では社会課題の解決につながるさまざまな事例を学び、自らをモチベートしている。現在は幅広い授業を受けながら自分が進みたい領域を検討中。実データを扱い、民間企業・政策機関と課題解決に挑む3年次のPBL演習には大きな期待を寄せている。
データサイエンスを「楽しい」だけで終わらせたくなかった
私は高校時代に所属していた物理部でPythonなどのプログラミングに触れていました。文化祭では、 プログラミングを活用して集客アップを考えたのですが、良い案が浮かばない。そこで、訪問してくれたお客さまへのアンケートを実施したのです。属性と回答内容を検討して文化祭での展示や応対に反映したところ、アンケート実施前よりも集客がアップ。この経験から、データを分析する楽しさを知り、データサイエンスというものに興味を持ちました。
楽しいだけで終わらせるのではなく、この経験を積み重ねて社会に貢献できたらいいな...と考え始めた時、「ソーシャルサイエンスとデータサイエンスの融合」であるソーシャル・データサイエンスという学問と、一橋大学のソーシャル・データサイエンス学部の存在を知り、「自分が学びたいのはまさにここだ!」と思い、志望しました。データサイエンスはある程度学びましたが、ソーシャルサイエンスは勉強した経験が殆どないため、これから勉強していきたいと強く思っています。
演習問題をたくさん解いておくことが、試験では重要になる
私が受験した後期日程の科目は「共通テスト」「英語」「数学」の3つです。ポイントはやはり数学ですね。演習問題をたくさんやって解けるようになっておけば、かなり有利になると感じました。逆に言えば、数学が苦手な人は相当苦戦するかもしれません。
社会課題を解決したいというモチベーションが学ぶ努力を生む
現時点で一番印象に残っている授業は、「ソーシャル・データサイエンス入門」です。実際にデータサイエンスを用いてどのように社会課題を解決するか、事例をたくさん示してもらえたことがとても刺激になりました。AIやChatGPTなど、話題の最先端技術はたくさんあります。それらを使いこなす知見は不可欠ですが、最終的に大切なことは社会課題の解決であり、「自分の力で解決したい」というモチベーションを持つことです。そのモチベーションがあって初めて、学ぶ努力ができるのではないでしょうか。
今はさまざまな授業を受けながら、自分がどの領域の課題を解決したいかを広くみている段階です。一橋大学では他学部の授業も受けられますし、優秀な他学部生との接点が多いことも刺激になっています。
今後、実際の社会課題を解決していくPBL演習が3年次にあります。企業や政策機関の方々に来ていただき、実際のデータをお借りして解決策を一緒に模索していく演習は、とても楽しみですね。PBL演習を通じて私自身の主体性も培っていきたいと考えています。