十人十色の留学がある
2022年10月3日 掲載
一橋大学とつながる世界中の学び
カリフォルニア大学、UCLなど、世界中のトップ校と交流協定を結ぶ一橋大学。学生交流協定校は27の国・地域に広がり、89大学※1に及びます。また、1年間または半年間の交換留学を主とする「海外派遣留学制度」や、世界で活躍できるスマートで強靭な人材の育成を目指す「グローバルリーダー育成海外留学制度」など、充実した留学支援制度あるのも特徴の一つです。学生交流協定校への留学は、一橋大学に授業料を納めていれば、留学先の大学の授業料を納める必要はありません。また、広く学生生活を支援する給付型の奨学金支給制度(一橋大学海外派遣留学制度※2)も設けています。留学の目的は十人十色。世界で学んだ学生の経緯や感想を紹介します。
※1 学生交流協定校
※2 一橋大学海外派遣留学制度
世界の潮流と自分のキャリアパスを、客観的に見つめる機会になった
法学部4年 稲田 裕太さん
留学先 イギリス/LSE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)
3年次に1年間イギリスに留学しました。きっかけは、2年次から受講した法学部GLP(グローバル・リーダーズ・プログラム)でした。国際弁護士というキャリアを視野に、国際感覚を身につけようとグローバルリーダー育成海外留学制度に応募しました。この制度では渡航費や授業料・寮費などが支援されるため、勉学に集中できると思いました。
留学先として選んだLSEは、経済学で世界的に著名な大学ですが、法学の分野でも世界トップクラスの教育・研究機関として知られています。世界の中心都市であるロンドンで、活気を感じながら生活できることや自由度が高いカリキュラムも魅力でした。
LSEには自学自習を重んじる風土があり、学生は事前にリサーチペーパーを作成したうえで毎回授業に臨みます。ゼミナールと講義が一体になっている感覚があり、一橋の授業スタイルとの違いがとても新鮮でした。コロナ禍の中でも対面授業を実施しており、非常に活発なディスカッションができました。私は子どもの頃アメリカやインドネシアで暮らしていたため、英語で学ぶことに対して不安はありませんでした。
知見や視野を広げるという留学の目的は、十分に達成できたと感じています。留学を通して得た一番の収穫は、世界中に同世代の友人ができたことです。帰国後もSNSでコミュニケーションをとり、近況報告や情報交換を続けています。
日本にいると、世界で起きている事象を主観的にとらえがちです。海外に身を置いたことで、俯瞰的に物事を観察する習慣が身につきました。国際弁護士になりたい気持ちがさらに高まり、卒業後は海外で活躍したいと考えています。
国が交差するからこそ養われた、違いを受け入れるという視点
商学部4年 西 修太朗さん
留学先 スイス/ザンクトガレン大学
これまでは、海外留学の経験がありませんでした。卒業までに一度は海外生活を体験し、その経験を将来に活かしたいと思ったことが留学の動機です。留学先として選んだスイスは、子どもの頃から興味がありました。アルプス山脈に囲まれた人口900万人弱の小さな国でありながら、世界トップランクの国際競争力を持つこと。国際金融で存在感を発揮していることにも注目していました。
留学先であるザンクトガレン大学は、一橋大学が加わるSIGMA※参加校9大学の一つです。社会科学系大学として幅広い研究・教育力があることが特徴で、授業が始まると"スイスにある一橋大学"という印象を受けました。
留学中は、密度の濃い毎日を送ることができました。国際関係について学ぶ授業では、人権をテーマに世界中から集まる学生と議論しました。特に印象的だったのは、ウクライナ出身の教員による講義を、ロシア人の学生が聴講するという講義でした。戦争は国と国の戦いであり、人と人の戦いではないことを肌感覚で学びました。
現地では、日本人を見かけることはほとんどありませんでした。自分は何者か、日本とはどんな国なのかと、深く考えさせられる人生初のマイノリティ体験となりました。また、私が生活していた地域の公用語はドイツ語だったため、英語で話す人がほとんどおらず、伝えたいことを意思や行動で示す必要がありました。留学中はコロナ禍が落ち着きつつある時期でしたが、現地では"マスクはできるかぎり着けたくない"という考えが根強く、当初、マスクを装着していた私は、周囲の中で違和感を放っていたように感じました。
留学を通して養われたのは、違いを受け入れるという視点です。こうした視点が得られたのは、多くの国が陸でつながり、多様な人々が流動する欧州に留学したからです。また、スイスでは想像以上にIT化が進んでいました。たとえば、スイスの市役所と日本の市役所を比較したときに、スイスではITのおかげで煩雑な手続きが必要なく効率的だったことに驚きました。日本の直面するITインフラの整備という社会課題を改めて痛感しました。スイスで得た知見を将来のキャリアに活かしたいと思っています。
- SIGMA(The Societal Impact & Global Management Alliance):社会イノベーションへの貢献という志を共有するグローバル連携。参加校は一橋大学をはじめに、シンガポール経営大学(シンガポール)、ザンクトガレン大学(スイス)、コペンハーゲン経済大学(デンマーク)、ウィーン経済大学(オーストリア)、パリ・ドフィーヌ大学(フランス)、ESADEビジネススクール(スペイン)、ジェトゥリオ・ヴァルガス大学(ブラジル)、中国人民大学(中国)の全9校。
関心あるテーマを現地で深く学べる。それが留学の魅力です
社会学部4年 大島 奈々さん
留学先 アメリカ/カリフォルニア大学デービス校
高校時代に語学研修に参加するなど、以前から海外留学に興味を持っていました。一橋大学に入学後も、1年次に「海外語学研修」でイギリスに留学しました。その時、街で人種差別的な扱いを受けたことがありました。この体験を機に、なぜ人は差別行動をするのか、その理由について研究したいと思うようになりました。私の経験から1年後、米国で白人警官による黒人男性殺害事件をきっかけにいわゆる"Black Lives Matter"運動が活発化しました。人種差別の背景にある歴史などを紐解くアメリカ社会史を学習したいと思い、一橋大学海外派遣留学制度に応募しました。
カリフォルニア大学デービス校を選んだのは、学びたい専攻があったことに加えて、人種差別問題に名高い研究者が在籍していたからです。また、キャンパスの立地や生活拠点の治安が良いことも、安心材料になりました。
アメリカ留学は、とても実りが多い体験でした。アメリカ社会史について最新の理論や研究に触れられたことはもちろん、世界中から集まる同世代と議論を交わせたことで、日本では得られない刺激を受けました。カリフォルニア大学デービス校はリベラルな校風が特徴であり、マスクが必要ではなくなってからも、ほぼ全員の学生がマスクを着けて授業を受けていたことは少々意外でした。
一橋大学の単位として単位互換制度を利用できることもあり、私は1年間で36単位分の正規科目を履修しました。留学期間中は、勉強漬けの毎日を過ごしましたが、充実感があり、大きな達成感がありました。自分の実体験と背景にある社会構造を理解することで、問題を客観的に考察できるようになりました。差別とは、生物学的に生じるのではなく、社会的に構築される現象なのだと学びました。
留学したことで、自分の中の"当たり前"を疑うことが習慣になりました。そして、学習意欲もいっそう高まりました。卒業後もキャリアの中でレイシズムの問題を追い続けたいと思います。