「複合領域コース」が叶える
文理の垣根を越えた知の創造

2022年7月1日 掲載

一橋大学では、四大学連合(東京医科歯科大学・東京外国語大学・東京工業大学・一橋大学)による「複合領域コース(特別履修プログラム)」を設け、各大学の特色ある授業科目を履修できる環境を提供しています。この制度は、学際領域や複合領域における学びを充実させ、これまで高等教育機関が育てることのできなかった新しい人材の育成を目指して2002年2月に設置されました。昨今はオンラインで受講可能な授業科目が拡大し、履修者も増加の一途をたどっています。履修の理由や感想などについて4人の一橋大学生に話を聞きました。

複合領域コース(特別履修プログラム)ラインナップと履修科目設置大学
【海外協力コース】 東京医科歯科大学、東京外国語大学、東京工業大学、一橋大学
【総合生命科学コース】 東京医科歯科大学、東京工業大学、一橋大学
【生活空間研究コース】 東京医科歯科大学、東京工業大学、一橋大学
【科学技術と知的財産コース】 東京工業大学、一橋大学
【技術と経営コース】 東京工業大学、一橋大学
【文理総合コース】 東京工業大学、一橋大学
【医療・介護・経済コース】 東京医科歯科大学、一橋大学
  • 他大学で取得した単位は単位互換協定により「国内交流科目」として認定され、コースの修了認定の単位として換算します。本学の卒業要件の単位としては、自由選択科目の単位として扱います。
  • 1年次以降このコースに登録し、2年次以降コースごとに指定された科目群より、他大学科目を含む所定の単位を修得することで卒業時にコース修了の認定書が授与されます。

詳しくはこちら

学生Voice

技術とビジネスをつなげるための視野を広げることができました

画像:髙津 美央梨さん

商学部2年 髙津 美央梨さん

履修先大学/所属コース/授業科目名
■東京工業大学/技術と経営コース/生産管理、経営情報システム、工業心理学

私は将来、販売戦略の立案やシステム構築などに携わりたいと考えています。データを活用して技術とビジネスを連結させられる人材になりたいと思い、商学部で昨年スタートした「データ・デザイン・プログラム※」も履修しています。また、理系の知識や考え方を身につけたいと思い、東京工業大学で提供されている「技術と経営コース」に興味を持ちました。

2年次の前期に履修した「生産管理」では、生産ラインの効率化や省力化などを図る手法やシステムについて学習しました。この授業で得た成果は、「製造現場で何が起きているか」を理解できたことです。そして、イノベーションを起こすには、理論に基づいて戦略を練る政策立案の領域だけではなく、製造や販売の支援を行う現場の領域までを知ることが重要だと気づきました。また、後期は「経営情報システム」という授業を履修しました。東京工業大学の学生たちとオンラインでグループワークが行えたことはとても新鮮でした。授業では、コンビニエンスストアの生命線といわれるPOS(販売時点情報管理)システムなどに注目し、技術やシステムの面からビジネスを考察する視点を養うことができました。また、生産システムを考えるうえで「工業心理学」の知見が活用されていることも驚きでした。「どうすれば人的ミスを減らせるか」といった課題をもとに、人間の認知や知覚を活かした製造現場の改善策を学ぶなど、非常に興味深い内容でした。

複合領域コースには、商学部生にとっても有益な学びが詰まっており、ビジネスを考える視点を増やすことができます。

自分のアイデンティティを大切にして学び、アンテナを広げられるコースです

画像:竹内 津紘さん

経済学部3年 竹内 津紘さん

履修先大学/所属コース/授業科目名
■東京医科歯科大学/医療・介護・経済コース/人体構造総論、人体解剖学、頭頸部・基礎
■東京工業大学/文理総合コース/経営・経済のための統計、ミクロ経済学第一

複合領域コースが設けられていることは入学前から知っていました。高校時代は理系クラスに所属しており、理系分野への進学を考えていたこともあって、理系大学の学生と学習できる機会を得たいと思いました。

東京医科歯科大学で履修した授業では、同大学の医学部生や歯学部生とのグループワークにも参加しました。症例について協議する際は、初めて聞く言葉も多く苦労しましたが、問題のとらえ方や分析の視点は経済学部での学びに通じるものがあり、楽しく学べました。また、社会科学と自然科学で発想法が異なることを実感し、気づきや刺激を共有する時間になりました。

東京工業大学で履修した科目は、一橋大学にも似た名前の科目があるものの、アプローチが異なっていました。「統計学」であれば、一橋では経済現象を解明する計量経済学の土台として主に学んできましたが、東工大では実験で得られた製品データを分析するなど、データの種類や活用方法に違いがありました。「ミクロ経済学」でも、東工大では線形代数や微分積分などの数式をより多く用いるなど、同じ学問でありながら学び方が異なっていました。その違いを知ることができただけでも、履修する価値があったと思います。

理系的な思考を持つことは自分のアイデンティティの一部であり、それを大切にしながら学べるのは、複合領域コースの魅力だと思います。一橋大学で経済学の学びを深めつつ、一方で純粋な興味からさまざまな学問に触れることで、知識のアンテナを広げられます。卒業までの限られた時間の中で自分の興味関心を深めたい人には、ぜひ履修してほしいコースです。

知的好奇心が満たされ、未知を知る面白さを実感できます

画像:和田 歩さん

法学部2年 和田 歩さん

履修先大学/所属コース/授業科目名
■東京医科歯科大学/総合生命科学コース/血液検査学講義

複合領域コースを履修している友人は周囲にも多くいます。私の場合は、理系分野の学問に興味があったので、理工系や医薬系の大学の授業を履修できる点に入学当初から魅力を感じていました。履修するきっかけになったのは、病院で採血を経験したことでした。止血が正常に行われているかどうかを判断する血液凝固検査を受けた時、そのメカニズムに興味を持ちました。東京医科歯科大学の「血液検査学講義」を履修したのは、そういった興味を持った内容について深く学ぶことができると思ったからです。

授業では、血液凝固の過程における最初の反応が引き金となって、次々と滝のように増幅されていくカスケード反応について学びました。同大学の学生に向けた授業なので、当初は困惑することもありましたが、非常にアカデミックな内容で、未知を知る面白さを実感できました。その満足感から、東京工業大学の生命科学や分子生物学に関する授業も在学中に履修したいと考えています。複合領域コースは、「学問の対象を一つに絞りたくない」「視野を広げられる教養を身につけたい」という人には特にお薦めしたいコースです。オンライン受講が可能になったことで、他大学に行く必要がないため、時間管理がしやすいという利点があります。そして何よりも大きな魅力は、知的好奇心が満たされ、期待以上のワクワク感を味わえる点にあると思います。

文系の自分に理系の知見が加わり、視野が広がりました

画像:画像:羽原 要さん

社会学部2年 羽原 要さん

履修先大学/所属コース/授業科目名
■東京工業大学/海外協力コース/国際開発共創概論、国土・都市計画概論、生活空間研究コース/インフラストラクチャーの都市計画、西洋建築史
■東京外国語大学/海外協力コース/ヨーロッパの言語1(マリ語初級1)、ヨーロッパの言語2(イディッシュ語の世界を知る)

私が一橋大学の社会学部に進学したのは、人間行動に及ぼす影響をテーマに、社会心理学を学びたいと思ったからです。人間行動を内面から紐解く一方で、外的要因から捉えるには理系分野の学問に取り組むのも面白いのではないかと考え、入学前から複合領域コースを履修しようと考えていました。特別履修学生として他大学の授業を自由に選択でき、単位数の上限を気にする必要がないことも履修の追い風になりました。

東京工業大学で履修した授業では、オンラインで学生とのグループワークにも参加しました。その際に感じたのが、社会科学とのアプローチの違いでした。たとえば、開発途上国が抱える諸問題を考察する「国際開発」についても、一橋大学の授業ではコミュニティ形成や人材教育などに焦点を当てますが、東京工業大学ではインフラ整備などで必要なテクノロジーやマネジメントの側面から検討を重ねました。こうした学びを通して、諸問題を解決するには文系の人材にも理系の知見が必要と実感でき、視野が広がりました。

東京外国語大学では、言語やコミュニケーションについて学べる授業を履修しました。私は高校時代や一橋大学に入学後も、第二外国語としてロシア語を学んでいました。そこで、同じスラブ系言語である「マリ語」やユダヤの人々が用いる「イディッシュ語」の授業を履修し、一橋大学では学べない言語を選択しました。

私の場合は人間行動を軸に置きましたが、一つのテーマを多面的に探究できることが複合領域コースの魅力です。特定の学問領域を学ぶだけだと視野が狭くなるのではないか?そんな不安を払拭してくれる学び方だと思います。

ENVIRONMENT

学びの環境