学生のベンチャースピリットを一橋大学の風土と国立の街が後押しする

2022年7月1日 掲載

"株式会社Reno Zero代表取締役社長"。そう印字された名刺には、現役の一橋大学生である経済学部の宮﨑雄太さん(以後:敬称略)の名前があった。古くは平安時代の食卓で定番だった調味料"梅酢"と出合い、その魅力を再び日本に広めようと3年生の時に会社を設立した。学生起業家に、立ち上げの経緯や現在の事業内容について話を聞いた。

画像:Reno Zeroのメンバー

自ら事業を起こすという選択肢

画像:宮﨑 雄太氏

代表取締役社長|宮﨑 雄太(経済学部3年)

宮﨑に起業のきっかけが訪れたのは大学1年生の時だった。経済学部に入学後、入部したボクシング部で練習に打ち込んだ。そして、空腹を満たすために頻繁に通った一橋大学生で賑わう飲食店で、元ボクシングトレーナーの店主と親交を深めていく。

「将来の夢に話が及んだ時、 "株式投資を学んで、お金を稼ぎたい"と当時の想いを打ち明けました。すると、"その目標では、雇用を生むといった一橋大学生としての社会的使命が果たせない。稼ぎたいのであれば起業してみてはどうか?"と。思いがけないアドバイスを受け、自ら事業を起こすという選択肢に気づきました」

思い立ったら行動するタイプの宮﨑は、起業に向けて一気に動き出した。商材を"梅酢"に決めたのは、東京での拡販を望む和歌山の梅農家から前出の店主の元に現物が届けられたことが端緒だった。

「試飲して、その美味しさに感銘を受けました。そして、市場に出回っていない希少価値、世の中の健康志向とのマッチングなど、梅酢に大きな可能性を感じました」

と宮﨑は語る。梅酢は、平安時代は庶民の万能調味料として親しまれていたが、時代の変遷とともに食卓から消え、現在は専門業者が無償で回収する梅干の副産物という扱いを受けているという。梅酢が再び消費者に支持され、価値が高まれば梅農家の収益拡大やフードロス問題の解消にもつながると宮﨑は語る。

目標を現実に変えた"一橋大学"というつながり

画像:金子 靖典氏

営業担当|金子 靖典(経済学部2年)

直感と勢いで起業を決心し、会社設立の準備に奔走する宮﨑だったが、手元に資金が無ければ起業は叶わない。そこで出資に快諾してくれたのが、店主から紹介された一橋大学の卒業生だった。

「経営者など企業で重責を担う方々の前で、作成した事業計画書を持参してプレゼンテーションに臨みました。のちの取引先に目論見や覚悟の甘さを指摘される場面もありましたが、数々の叱咤激励を受けたことが経営者マインドを養う転機になりました」

社名である"Reno Zero"は、リノベーション(手を加えることで脚光を浴びること)とゼロ(まだ陽の目を見ていない状態)を組み合わせた造語である。Reno Zeroのメンバーには、宮﨑の営業活動を手伝う経済学部生の金子靖典も加え、資金集めのためのクラウドファンディングも実施した。

「宮﨑さんとは同じ飲食店で知り合いました。私も梅酢の美味しさに感銘を受けた一人で、事業構想に共感して参画しました。食料品を扱うデパートやスーパーマーケットとの交渉や提案活動は、経済学部で学んでいる消費者ニーズを探るための統計分析や実証研究の手法を、実際のビジネスで試す機会にもなっています」

地方と地方をつなぎ、日本全体を盛り上げる

Reno Zeroでは現在、万能・健康調味料として梅酢の普及を目指し、『古(いにしへ)』というブランド名で首都圏での拡販に努めている。また、派生する加工食品などの開発や製造、商品のシリーズ化も構想している。その結果、2021年6月の創業から約1年で、経営が軌道に乗ってきたという。今後の事業展開について宮﨑に尋ねてみた。

「Reno Zeroが目指しているのは、地方と地方をつないで日本全体を盛り上げることです。その一環として今行っているのが、地域間でのコラボレーションによる販売促進や商品プロデュースです。富山県産の海産物や北海道産の乳製品など、和歌山県産の梅酢と相性の良い特産品を組み合わせ、地方同士とReno Zeroの三者でWin-Winの関係を築くことを目指しています。これからも、まだ知られざる地域の良品に光を当て、世界に発信していきたいと考えています」

こうした戦略の実現にも、日本全国に広がる如水会を軸とした一橋大学の卒業生ネットワークが活きていると、宮﨑は感謝の気持ちを言葉にした。

「失礼を承知で先輩方を頼りにすることも、学生だからこそ許される起業の仕方だと思います。なりふり構わず踏み出したことで、大学生活が大きく変わりました」

Renozeroはクラウドファンディングで資金調達に成功している

画像:梅酢イメージ

梅酢「古(いにしへ)」と梅酢を使った調味料「梅酢たっぷりしょうゆ味」

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