優れた学生を積極的に評価
「一橋大学学生表彰制度」
2021年9月28日 掲載
授業やゼミナールなどで取り組んだ学習が実を結ぶ。そして、修めた成績が大学から高く評価される。学生にとって最も励みになるのは、日頃の地道な努力を賞賛されることではないだろうか。
一橋大学には、学生が受けた教育の成果を評価する「一橋大学学生表彰制度」が設けられている。学ぶ意欲を高めることを目的に、2007年度から導入された。学術研究活動、課外活動、社会活動などで顕著な業績・功績を残した個人・団体など、表彰の対象は幅広い。
中でも、各学部で学年毎(2~4年次生)に行われるのが、学業において特に優秀な成績を修め、人物的にも優れた学生を対象とした表彰である。前年度の成績が評価基準を満たした学生の中から、選考を経て、原則として各学部各学年1名ずつが各学部長から推薦される仕組みとなっている。そして、表彰される学生に対して贈られるものは、表彰状や記念品に留まらない。副賞として月額8万円の奨学金が12か月分授与されることも特長の一つである。(ただし、被表彰者が他の給付型奨学金を受給しているときはこの限りではない)
では、どのような学生が表彰を受けているのか。事例として2人の学部生を紹介する。学業との向き合い方や大学生活の送り方に触れることで、自身の入学後のイメージを膨らませてもらいたい。
人生の糧になる4年間にしたいため、
「多忙な毎日」を自分に課しています
山川 貴史さん
商学部4年
表彰されたことは、率直に嬉しかったです。3年次として迎えた2020年度は、新型コロナウイルス感染症の影響で学業を続けることに不安を抱えながらのスタートでした。しかし、それは始まってみると杞憂でした。オンラインの授業には、自宅から参加できるというメリットがあり、効率的に学習を進められたことが、高成績を修められた要因の1つだったと思います。
私は、1年間の浪人生活を経て一橋大学に入学しました。また、実家のある群馬から上京し、一人暮らしをしています。良い成績を修めることは、支えてくれている家族への恩返しになると思い、入学当初から「中途半端な学生生活を送りたくない」「学業で負けてはいられない」という気持ちがありました。表彰されたことで4年次は奨学金が給付され、少しは恩に報いることができたように思います。
一橋大学の魅力は、各学部間の垣根が高くない点にあると私は思います。他学部の学生とグループワークを行う授業が開講されており、転学部制度もあります。私が入学したのは経済学部でしたが、学習を続けるうちに自分の興味の輪郭が見えてきて、2年次が始まるタイミングで商学部に移りました。結果として、学びに対する手応えを常に感じながら卒業を迎えることができそうです。
学業で成果を残すのは大切なことですが、それだけが大学に通う目的ではないと思います。私は「人生の糧になる経験ができるなら、あえて多忙でハードな毎日を過ごそう」と考えていたので、これまでさまざまな活動に力を入れてきました。たとえば、サークル活動です。私には入学前から、将来は金融業界に身を置き、資産運用のエキスパートとしてグローバルに活躍したいという目標がありました。そこで入学後に入部したのが一橋大学公認の学生投資サークル「TOWALY(トワリー)」です。2年次には代表を務め、株式投資や経済全般に興味のある学生を募って現在も活動しています。週1回勉強会を開催し、投資に関する研究や経済ニュースの分析を行うのが主な活動内容です。また、高校時代から続けているボクシングについても体育会ボクシング部に入部して鍛錬を重ねてきました。これらの活動を通して多様な出会いに恵まれ、人脈を大きく広げることができました。
私は、もともと興味を持った物事を深く堀り下げていくのが好きなのですが、その意味で大学は、自由な探究の旅を楽しめる場所だと思います。これから大学への進学を控えた高校生の皆さんには、自分がどんなことに興味があるのかを知るうえでも、大学ではいろいろなことにトライしてみることをお薦めします。先入観を持たずにあらゆる授業を受けてみて、面白いと感じれば夢中になれますし、その結果が学業成績につながるのだと思います。
大学で得た知識や経験を、社会に還元したい。
だからこそ今は、貪欲に学び続けています
加藤 真梨さん
社会学部2年
私は入学した昨年(2020年度)、可能な限り多くの科目を履修して学業に臨みました。せっかく入学したのに、進級に必要な単位数の科目しか学ばないのは、学びの機会の損失、つまり「もったいないこと」だと捉えていたのです。社会に対する視野を広げるためにも、先ずは広く浅く学んでみようと思いました。1年次のマインドセット次第で後々の自分の可能性が変わるかもしれない、得られた知識が2年次以降の学びの土台になると考えていました。そこで、大学では自分の成長を意識し、入学当初から貪欲に学び続けています。
ただ、一橋大学には非常に優秀な学生が本当にたくさんいて、まさか自分が表彰されるとは思いもしませんでした。受賞できたのは、クラスメイトに負けたくない、という気持ちから、友人と切磋琢磨して学びに取り組むことができたからかもしれません。
大学生活の中で時間を割いて取り組んでいるのは、入学直後から所属している「AIESEC(アイセック)一橋大学委員会」での活動です。AIESECは世界最大級の学生団体で、海外インターンシップなどの参加や運営を通して、「平和で、人々の可能性が最大限に発揮された社会」の実現を目指しています。世界には、貧困などのさまざまな問題によって教育を受けられない子どもや若者がたくさんいます。一方で自分は、恵まれた環境の中で不自由なく学業に取り組める環境があります。自分の持っているものを社会に最大限に還元するためにも、一橋大学で十分に知識や経験を得たいと感じています。
また、課外活動だけでなく、さまざまな学問に触れるよう意識しています。入学当初は、移民問題に関心がありました。きっかけは、さまざまな社会の問題をオムニバス形式で取り上げる授業を受けたことです。膨大な専門知識や知見を持つ先生方に囲まれて学べるのが、一橋大学の魅力です。
2年次を迎えた現在は、日本の教育政策について学びを深めています。私が育った地元は、製造業の現場で働きながら暮らす在日外国人が多い町です。海外にルーツを持つクラスメイトと過ごした原体験から、未来を創る教育の重要性を認識するようになりました。中学校や高校の教員になることを視野に入れ、在学中に教職課程を履修する予定です。
また、最近では、それぞれの授業で学んだことを複合的に捉えるようにしています。初めは全く興味がないと思っていた講義でも、振り返ってみると自分の糧になっていることが多くあります。たとえば、経営学に大きな関心を抱いていた訳ではなかったのですが、教育問題を解決する手段の一つとして、ソーシャルビジネスの可能性にも注目するようになりました。学部ごとの垣根が低いという環境を活用し、さまざまな視点を身に着け、ミクロとマクロ両方の視点を養い、将来の道を見定めていくつもりです。