ラフティング国際大会3位という結果で気づいた世界で活躍する人材に必要とされること

(『HQ』2015年春号より)

一橋大学ラフティング部

一橋大学ラフティング部部員

左から滝鼻さん、斉藤さん、馬本さん、田中さん

初めての国際大会で設定した"表彰台に上がる"という高い目標

田中嶺さん

田中嶺さん

馬本貴弘さん

馬本貴弘さん

斉藤鷹平さん

斉藤鷹平さん

滝鼻章太さん

滝鼻章太さん

ゴム製のボートに乗り、川を下るアウトドアスポーツとして知られるラフティング。大自然のなかで急流・激流に漕ぎ出すスリルが人気のレジャーとして、テレビなどさまざまなメディアで取り上げられることも多いが、それはゴールまでのタイムや着順を競うスポーツ競技でもある。
その国際大会で、23歳以下のカテゴリで総合3位になるという快挙を成し遂げたのが、一橋大学ラフティング部だ。2014年10月10日から3日間にわたって開催されたこの国際大会は、「インターナショナル・ラフティング・フェデレーション」という国際的な機関が主催し、ブラジル・パラナ州にあるイグアス川を舞台に、過去最多の全20か国(23歳以下は10か国)が参加して行われた。一橋大学ラフティング部からは、田中嶺さん(経済学部4年)、馬本貴弘さん(社会学部4年)、滝鼻章太さん(商学部3年)、斉藤鷹平さん(経済学部3年)をメンバーとするチーム「TAMA」が出場し、見事に世界3位という成績を収めたのである。
「海外のチームは、学生だけではなく社会人の選手たちも参加していました。開催国であるブラジルや、リバースポーツが盛んなヨーロッパ勢が強豪とされるなかで、私たちの目標は表彰台に上がれる3位以内に入ること。それでも高めの目標でしたが、事前に前回大会の動画などをチェックしながら、自分たちの実力で達成できるものとして設定しました」(田中さん)

同年4月に開催された「第1回全日本レースラフティング選手権兼代表選考会」、5月の「第38回リバーベンチャー選手権大会」でも総合優勝を果たしていた同チームは、国内ではまさに敵なしの存在となっていた。世界3位以内という目標は決して実現できないものではないという高い意識で、彼らは国際大会に臨んだのである。

イメージの共有と効率化という意識がほかのチームとの違い、強さを生む

ラフティング競技には4つの種目があり、競技会や大会では各種目の順位やタイムによって獲得ポイントが設定されており、その合計で総合順位が決められる。それぞれの種目でより早くゴールするためには、艇を漕ぐ力以上に、メンバー同士のイメージの共有が求められると、田中さんは語る。
「2艇同時にスタートするH2H(ヘッド・トゥ・ヘッド)やダウンリバーなどでは、いろいろな駆け引きがあるので戦略を立てる力も重要になりますが、ラフティングで何よりも大切なのは、イメージどおりに艇を動かしながら川を"泳ぐ"力です。正しいイメージを4人で共有する、チームとしての総合力が問われるスポーツだと思います」(田中さん)

現在は体育会に属する一橋大学ラフティング部だが、もともとはサークルとして40年ほど前に発足したという。その歴史のなかで、日本選抜チームのメンバーを輩出するなど国内トップクラスの成績を残していた時期もあったが、ここ数年はそれほど目覚ましい結果を出していたわけではなかった。今回、世界大会に出場したチームも、幼少期から競技に親しんだエリートたちが選抜されたわけではなく、大学からラフティングを始めたメンバーたちで結成された。そのチームを世界3位という結果に導くきっかけは、カヌースラロームの元日本代表だった小田弘美氏をコーチとして招聘したことにある。小田氏が運営するカヌー教室で田中さんがアルバイトをしていたことが縁で、コーチを依頼。小田氏の指導を受けるようになりチームに変化が起こった。カヌースラロームは、川の流れを読んで一人乗りのカヤックを効率よく漕ぎ、艇をスムーズに動かしながら下ることで好タイムを目指す競技。メンバーたちは、艇を"泳がせる"ことの大切さを熟知しているコーチから、ほかのチームとの差を生み出す漕ぎ方、屈強な選手たちがひしめく国際大会でも結果を残せる漕ぎ方を伝授されたという。「川の流れをしっかりと見て、効率的に漕いで艇を動かすことを意識するようになりました。がむしゃらに漕いで無理やり進むことが主流の学生ラフティングのなかで、私たちがほかのチームと違うのはその意識によるものだと思っています」(馬本さん)

海外選手と対峙することで不安は払拭され練習の積み重ねで得た自信が確信に変わった

ラフティング競技の様子1

ラフティング競技の様子2

ラフティング競技の様子3

一橋大学ラフティング部のメンバーたちは、土曜日と日曜日に御嶽駅近くの多摩川に出かけて練習を行うほか、平日は朝練習に取り組んでいる。練習で重視するのは、やはり4人の漕ぐリズムやイメージを合わせることだという。
「チーム結成当初は、前に位置する2人が川の流れを見てみんなに指示を出すということも必要でしたが、最終的にはメンバーそれぞれが"この波はこう通る"というイメージを合わせることができるようになりました。声を掛け合わなくても全員が同じことを考えている、という状態に近づいたということだと思います」(馬本さん)

世界で戦ううえでは、あたかも1人で艇を動かしているかのような動きを実現する協調性の高さが大きな武器となった。一方で、スピードアップや艇の操作で必要になる漕ぐための体力も充実させなければならないが、特に筋力トレーニングのようなメニューは設定していないという。あくまでも漕ぐことでラフティングに必要となる筋力を鍛え、そして4人の結束を高める効果を重視した練習を続けることで、国内外の大会を勝ち抜いてきたのである。チームの調和に自信を持って挑んだ世界大会について、メンバーたちは次のように振り返っている。
「海外の選手たちは私たちと同じ年齢とは思えないほどの体格で(笑)、少し圧倒されたのも事実です。しかし、実際に試合が始まってみると不安はなくなりましたし、筋力で劣っていても、練習で培ってきた技術や川の流れを読む力など、自分たちの実力は世界でも通用するのだと思いました」(馬本さん)

初めて参加する国際大会で、事前に不安を感じたとしても不思議ではない。しかし、試合が始まると同時に不安は払拭され、これまでの積み重ねで生まれた自信は、しだいに確信へと変わっていった。この点については、田中さんも同じ思いだったと語る。
「世界の選手たちは自分たちよりうまい、という先入観があったのは確かです。でも、自分たちがやってきたことが正しかったと感じられましたし、日本人でも世界で十分に戦える。このことは後輩たちにも伝えていきたいですね」(田中さん)

世界を驚かせる結果を導き出した協調性と組織力

国旗をもってガッツポーズをするメンバー

日本代表チームのメンバー4人と、一番右は補欠メンバーの新潟大学・水上駿さん

大会参加時に2年生だった斉藤さんは、ラフティングという競技の魅力は、チームワークを重視しながらも自分の極限を追求できる点にあると語ってくれた。
「4人で一丸となって最高のタイムを目指すためには、艇の右と左で漕ぐ強さを合わせて方向を定めなければなりません。そのなかで自分の力を出し切って漕ぐこと、メンバーそれぞれが極限を目指すことがチームの力になるというところが、ラフティングの一番の魅力だと思っています」(斉藤さん)

ラフティングの試合では、一人ひとりが最大限の力を発揮し、共通の意識を持ちながら一つのゴールを目指す。まさに組織力が問われるスポーツと言えるが、体力に頼らず協調性を武器とした日本のチームが3位となった結果は、海外の選手たちに少なからぬ衝撃を与えたそうだ。
「日本チームの下馬評は決して高くありませんでしたが、私たちが3位という結果を出したことで、皆さんすごく驚いていましたね。いろいろな国の選手たちから"すごいな!"と声を掛けてもらいました」(田中さん)

自分たちの強みに自信を持って競技に挑み、結果を出しながらお互いに認め合う。スポーツを通したそうした交流の経験は、将来社会に出る学生として大きな収穫となったという。
「大会に行く前は、言語も文化も違う海外の選手たちと仲良くなれるとは思っていませんでしたが、同じスポーツが好きな人間として付き合うことで偏見もなくなりましたね。フレンドリーに接することもできましたし、とても嬉しい経験でした」(滝鼻さん)

世界に出るために必要となる自分の「芯」とラフティングを通して得た自信

ラフティング競技の様子4

ラフティング競技の様子5

国旗に寄せ書きをする様子

今回の経験を通して、世界に出たいという気持ちが強くなったと語る滝鼻さんは、今後、海外留学にもチャレンジするそうだ。語学力に不安があっても、自分が心から好きなもの、自信を持てるものがあれば、それを共通項として多くの人々と関係を築くことができるはず。そう語る滝鼻さんの思いには、斉藤さんも共感を示している。
「世界に出たときには、自分が"これ"と思える芯のようなものが必要だと思います。バックグラウンドというか、自信の裏づけとなるものがあれば、どんな環境のなかでも押しつぶされることなく、自分を出しながらいろいろな人と関係を築けるのだということを、今回学びました。私にとっての芯はラフティングだったわけで、ラフティングに取り組むことで自信を得ることができたと思っています」(斉藤さん)

強みを活かしながら、自信を持って最大限の力を発揮する。そして結果を出しながらお互いを認め合うということを、メンバーたちはラフティングというスポーツを通して体験したのである。今回のブラジルにおける国際大会は、一橋大学ラフティング部にとっての貴重な成果を生み出すと同時に、メンバーたちにとってグローバルを肌で感じる絶好の機会となったようだ。

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学びの環境