タイ・チュラロンコーン大学との合同合宿で空手道部員たちが実感した成長
- 一橋大学空手道部
(『HQ』2014年夏号より)
日本発の武道として全世界に普及し、多くの競技人口を持つ空手。いくつかの流派に分かれるこの武道において「
「日本の文化である空手を通じて世界に出られる、他の国の人々と交流できるということを知りました。学生にとってはとても貴重な経験になっていると思います」(河野さん)
「体育会の部に所属している自分としては、レベルが高いタイの空手に触れられるのは大きな魅力です。もちろん、大村先生の下で練習ができるというのも、技術の向上を目指すうえではとても刺激になっています」(鍋嶋さん)
日・タイ開催の合同合宿がもたらす空手の技術向上と国際的見聞
2013年は、3月11日から16日にかけてチュラロンコーン大学の学生が来日。その日程のなかで、早朝・午前・午後と1日2〜3回の練習を行い、合間の時間には東京都内観光や日本語教室、学内でのレクチャーなどが実施された。年によっては在日タイ大使館に出向き、公使を表敬訪問することもあるとのことだ。また、日本からタイに訪問する際も合宿のメニューは同様で、到着日から始まる合同練習やバンコク市内観光、タイ語教室や民芸品づくりといった活動を共に経験しながら、両国の部員たちが友人としての関係を構築している。2013年は8月6日から約1週間の日程でタイでの合同合宿が実施され、部員たちは練習に取り組むと同時に、異国文化に触れる経験をしてきたということだ。
「言葉があまり通じない場面もありましたが、ジェスチャーで意思疎通を図ることもできました。日本人もタイ人も同じアジア人なので、基本的にはあまり変わらない、というのが僕の印象でした」(鍋嶋さん)
「タイの学生たちも僕らも4年間同じメンバーなので、同期意識のようなものを感じます。同じようなことを目指している友人にも出会えましたし、"将来は同じフィールドで働くかもしれないね"ということを語り合ったこともありました」(河野さん)
今年度は、5月下旬にタイで、そして8月中旬から下旬にかけて日本での合同合宿が予定されている。これまで同様、その合同合宿で体験する国際交流のなかで、多くの学生たちが自国にはない文化や他国との違い、共通点などを認識しながらグローバルな友人関係を築き、国際人としての見聞を広めていくのだろう。
学生主導で企画する合宿で得られる気づき
日本における合同合宿のスケジュール作成や、宿泊先の手配、如水会への補助申請などは、合宿担当となった部員が中心となり、学生たちが自ら行っている。OB・OGらの協力を得ながら春から準備を進め、海外からの訪日メンバーを歓待する取り組みを部員たち自身が進めることが、空手道部の国際交流に関する伝統となっているようだ。またタイでの合宿についても学生が現地の学生たちとコンタクトを取り、細かい調整などを行いながら実施されるということだ。そうしたやり取りも含め、タイという異国の学生たちとコミュニケーションを図るうえで気づいたことについて、2013年に初めて合同合宿に参加した鍋嶋さんと、これまで3回の合宿経験がある河野さんが、それぞれ次のように説明してくれた。
「タイの学生とは英語でコミュニケーションを図りましたが、彼ら彼女らにとっても英語は母国語ではありません。僕が感じたのは、"きれいにしゃべろう"とする意識よりも、心を開いて会話をする意識のほうが大事だということでした。何を伝えたいのかという気持ちを込めてしゃべることで、多少発音が悪くても自分の思いが伝わるんだということに気づきました」(鍋嶋さん)
「もっと日本の勉強もしなければ、と思うことも多々あります。語学力はもちろん、海外の人とコミュニケーションを図るためには何を勉強するべきか、ということにも気づけたので、とてもいい経験をさせてもらえる行事だと思っています」(河野さん)
学生たちは、自ら企画した思い入れのある交流活動のなかで、多くの友人たちと出会いながらさまざまな気づきを得ている。一橋大学空手道部の恒例行事であるチュラロンコーン大学との合同合宿は、空手という日本が世界に誇る武道を通し、学生たちの自主性、そしてグローバルな視点を養うことに寄与しているのだろう。