商店街の枠を超え、国立の人と人をつなぐ

  • 一橋大学まちづくりサークルPro-K(プロック)

2024年10月2日 掲載

一橋大学の国立キャンパスから徒歩約15分の距離にある国立富士見台団地。この地を舞台に"地域活性化"をテーマに活動を続けてきた一橋大学まちづくりサークルPro-Kは、2023年に設立20周年を迎えた。商店街の"空き店舗"を利用し、地域住民と協力しながら店舗運営やイベント企画を行ってきたPro-Kだが、昨年には新業態店舗『クミタテ』が加わり、活動もさらに拡大している。現リーダーの辻川菖太郎さん(商学部3年/千葉県私立市川中学校・高等学校出身)、次期リーダーの甲斐田愛子さん(社会学部2年/神奈川県私立横浜雙葉中学・高等学校出身)、そして『クミタテ』リーダーの清水稚文さん(経済学部2年/埼玉県立浦和高等学校出身)に、Pro-Kのこれからについて語ってもらった。

辻川 菖太郎さん

現リーダーの辻川 菖太郎さん
(商学部3年)

甲斐田 愛子さん

次期リーダーの甲斐田 愛子さん
(社会学部2年)

清水 稚文さん

『クミタテ』リーダーの清水 稚文さん
(経済学部2年)

6つのチームで地域交流を生み出す

Pro-Kは一橋大学のサークル活動でありながら、富士見台地区に人のつながりをつくり出すために設立されたNPO法人「くにたち富士見台人間環境キーステーション」の一員となって協働し、商店街をコミュニティの交流拠点と位置づけて店舗運営を行っている。したがって売上が第一目標ではないものの、大学での学びを実践する場としても活発に議論が交わされる。

Pro-Kが営む店舗は現在5つ。"ここにくるとたのしい"をコンセプトにしたコミュニティ・カフェ『ここたの』、くにたち野菜やこだわりの地域物産を販売する『とれたの』は、食というテーマで地域住民の生活に彩りを与える。貸しホール『まちかど』は幅広い年齢層を対象にしたイベントが開催される交流の場。手作り雑貨とリサイクル品の店『ゆーから』は、住民が出品することもでき、売買を通して地域のつながりが生まれる空間。そして2023年にスタートした会員制のものづくり工房『クミタテ』には、ノコギリ・レーザー加工機・3Dプリンターなど多彩な機材が揃い、ものづくりの楽しさを伝え、生涯の趣味をサポート。市内在住のデザイナーと連携し、市で伐採された街路樹の桜を使ったノベルティを制作するなど、国立らしさも発信する。店舗のほかにも、イベントの企画・運営や街の魅力を発信するフリーペーパー「やっほー」を発行する『商店街協同』を併せると、計6チームが活動中だ。店舗チームのメンバーはシフト制で月3〜4回活動し、毎週水曜日には全チームが経営や活動について話し合う定例会議を実施する。商店街には100人近くの学生が集まり、一層活気づく。

「地域活性」を肌で学ぶ3年9ヶ月

Pro-Kへの参加動機は、それぞれの店舗経営に興味を持って参加する人、まちづくり×ビジネスという活動内容に魅力を感じて参加する人などさまざまだ。集まったメンバーも「農家と密接に関われる『とれたの』の活動に惹かれました」(辻川さん)「商店街というフィールドで実際に活動できることに興味を持ちました」(甲斐田さん)「高校時代から木工が好きで、自分の創作にも使える『クミタテ』は魅力でした(笑)」(清水さん)と三者三様。それぞれが『とれたの』、『ゆーから』、『クミタテ』のチームメンバーとして、商品企画や販促、財務といった経営業務全般のマネジメントに関わってきた。

「国立市の農作物が減少する中、『とれたの』は地産地消を第一にしながらも食育や新たなコンセプトを打ち出す必要性を感じています。かつて国立市でも栽培され今も住民が好んで食べる梨を仕入れるなど、地域の嗜好に合わせた品揃えを充実させ、好評をいただきました」(辻川さん)「『クミタテ』は当初2人からのスタートでしたが、次第にメンバーが増え自由闊達にアイデアが出せるようになってきました。学生や子どもといった新たな層にフォーカスし、ものづくりが習い事の一つとして認識されるようなイベントを定期的に開催していきたいです」(清水さん)。こうしたアイデアが飛び交う中、活動の中から自らの長所を見つけたメンバーもいる。「全体的な運営のタイム・タスクマネジメントが得意です。今は、メンバーが自由に発想し活動できるようサポートすることに大きなやりがいを感じるようになりました」(甲斐田さん)。

学生がPro-Kの活動に関わるのは最長3年9ヶ月だが、2年次からリーダー職を経験することで、考え方も大きく変わる。「『自分が何をやりたいか』から、『地域のために何ができるか』へと意識が変わっていきます。市民を巻き込み、市民を中心に据えながらサポートする。机上では決して得られない地域活性に必要な視点が、肌感覚で身につきました」(辻川さん)

国立の人と人をつなぐハブとして活動領域を広げる

最近では、6つのチームの活動に留まらず、Pro-K全体で国立市周辺のイベントを支援する動きも増えている。2023年からは富士見台地域でごみ拾い活動を行う小出聡さん(日本・エストニア友好協会理事)と一緒に「World Cleanup Day」に参加した。2024年には商店街代表として谷保天満宮例大祭の神輿を担ぐなど、地域団体からのアプローチも増加中だ。Pro-Kは大幅増員し、総勢140人になった。「人数が増えたからこそ、できる活動の幅も広がりました。今ある6つの枠にとらわれず、あらゆることに挑戦していきたいと思っています」(辻川さん)。今年9月には辻川さんから甲斐田さんへとリーダーをバトンタッチするが、この想いは変わらない。「サークルとしても、メンバー一人ひとりの興味を刺激できるようなチャンスを数多く提供していきたいです」(甲斐田さん)。

先輩たちから受け継いできたアイデアの卵も無数にある。たとえば谷保駅北口に出店し、中高生層がまちづくりに関われるきっかけをつくる...など、Pro-Kの構想は尽きない。Pro-Kの理想は、地域の人と人をつなぐハブとして長く機能していくこと。紡いできた歴史や実績から、商店街、そして地域との信頼関係がしっかり築かれている。だからこそ地域の人々の胸を借りながら新しいことに思い切って挑戦できる環境が整っているのだ。3人とも、活動を通して国立という街がどんどん好きになっていったと語る。実際に店舗を運営し、地域住民と触れ合い、強い思い入れを持って向き合うことで、街は活性化していく。これからもその想いは、新たなリーダーたちによってつながれていくだろう。

写真1

新たにオープンしたものづくり工房『クミタテ』の前で

写真2

Pro-kが発行するフリーペーパー「やっほー」

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