人がつながる商店街づくり

一橋大学まちづくりサークルPro-K(プロック)

2019年6月5日 掲載

商店街=コミュニティの交流拠点

「Cafe ここたの」の店長を務める経済学部2年 岡田晴登さん、2018年まで店長を務めていた商学部4年櫻井恵花さん

「Cafe ここたの」の店長を務める経済学部2年 岡田晴登さん、2018年まで店長を務めていた商学部4年櫻井恵花さん

国立キャンパスから歩くこと約10分。谷保駅から程近い場所にある、戦後の高度成長期に建設された大規模団地、国立富士見台団地を訪れた。その1号棟1階に構える商店街の"空き店舗"を利用して、一橋大学の学生が中心となって店を営み地域活性化に貢献している。
店舗を運営するのは、一橋大学まちづくりサークルPro-Kの面々。まちづくりや地域活性化をテーマに活動を行う学生団体で、地域住民と協力しながら国立市の商店街で店舗経営やイベント企画などに携わっている。このプロジェクトは、団地完成から50年以上が過ぎ、住民の高齢化とともに勢いを失った商店街に空き店舗が目立つようになり、いわゆる"シャッター商店街"になるのではという危機感を抱いたことから、人がつながるコミュニティを蘇らせるべくスタートした。
もちろん、学生たちの情熱や学問で得た知識だけで成し遂げられることではない。このプロジェクトの特長は、地域の商店主や市民・行政と一丸となって進める点にある。富士見台地区に新たな人のつながりをつくり出すために設立されたNPO法人「くにたち富士見台人間環境キーステーション(以下KF)」の一員となって協働し、商店街をコミュニティの交流拠点と位置づけて店舗運営を行っている。

1事業1チームの体制で行われる運営

地元産野菜や物産を販売する「とれたの」

地元産野菜や物産を販売する「とれたの」

1店舗目がオープンしたのは、サークルが発足した2003年。以来、店舗の切り盛りは代々Pro-Kメンバーによって受け継がれ、創意工夫によって拡充されてきた。そして現在は、5事業が運営されるまでに発展した。
"おいしくつながる"をコンセプトにしたコミュニティ・カフェ『Cafeここたの』や、地元・国立産の新鮮な野菜と全国のこだわりの物産を提供する『とれたの』は、団地や周辺の住民にとって生活密着型の店と言える。一方で、余暇の過ごし方やカルチャーに着目した事業としては、大学教授による専門講座や子ども向け教室などの開講や多目的ホールのレンタルを行う『まちかど』や、地元住民が出品する手作り雑貨やリサイクル雑貨を販売する『ゆーから』がある。また、商店街そのものの盛り上げや自治会への協力を目的に、イベントの企画運営や、まちの魅力を発信するフリーペーパー発行に当たる『商店街協同』も運営している。
Pro-Kのメンバーは現在、一橋大学の文化系サークルとしては最大規模となる約80人。各事業の運営は、1事業につき1チームの計5チーム体制で行われている。

まちが学生を育て、学生がまちを変える

地域住民の手作り雑貨やリサイクル品を販売する「ゆーから」

地域住民の手作り雑貨やリサイクル品を販売する「ゆーから」

さらに、地元の商店主が務めるKFの理事長・副理事長とともにプロジェクト全体を統括する理事には、各チームのリーダーが名を連ねる。そして、メンバーにも業務・財務・渉外・広報という担当業務が割り振られており、中小企業さながらの組織体制や機能を有している。参加した感想を、休憩をとった『Cafe ここたの』でメンバー2人に尋ねてみた。
「もともと店舗経営に興味があったのでPro-Kに入りました。私は店長を務めていますが、授業で学んだ理論と、現場で生じた課題を解決していく実践を、対比させながら経営を肌で学べる場になっています。先輩方が築いてきた富士見台地区での信頼関係を大切にし、経営的にも店舗を継続させることで"つながり"を団地や周辺住民の皆さんに還元していきたいです」(櫻井恵花さん/商学部4年)
「ミクロな視点で経済学を学びたいと思ったことが参加したきっかけです。私は東京都内から通っていますが、活動を始めて深まっていったのは国立への愛着でした。気づいていなかった街の魅力に気づく機会にもなり、多様なお客様と触れ合うことで世代ごとに異なる魅力があることを知りました」(岡田晴登さん/経済学部2年)
運営される事業のカタチはさまざまだが、「まちが学生を育て、学生がまちを変える」点は同じである。店内を覗いた時、明るくて元気な学生が働いている姿があるだけでも、商店街の印象は若返る。それも、ついつい足を運びたくなり、いつでも店の周辺に人の集まりができている理由かもしれない。

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