法学部
アドミッション・ポリシー
受験生へのメッセージ
自由と多様性を重んじる一橋大学法学部で
共に自由と平和を考えましょう
竹下 啓介教授
法学研究科長・法学部長
受験生の皆さんにとっては、法律の条文を知ること以外に法学部で何を学ぶのか、イメージすることは難しいかもしれません。あくまで一つのとらえ方に過ぎませんが、法学部で学問として学ぶことは、自由と平和だと思います(より詳しくは、一橋法学・国際関係学レクチャーシリーズ刊行委員会編『教養としての法学・国際関係学:学問への旅のはじまり』〔国際書院、2024年〕を読んでみてください。)。
法が人々を縛るルールであることからすると、自由というのは真逆のことのように思われるかもしれません。しかし、自由を守るためには法が重要となります。人々が対等な関係で共生しようとすれば、最低限、お互いに傷つけない、お互いに強制しないといった形で、各人の自由を相互に尊重するルール、つまり法が必要なはずです。他者を傷つけたり、強制したりする行動が法によって禁止されるからこそ、自らも傷つけられず、強制されない。すなわち、自由が守られるのです。社会において法によってしか縛られず、法の下で各人の自由が相互に尊重されることによって、平和な共生が実現可能となります。そして、現代において、このような自由と平和の実現は、日本社会の枠組みを超えたグローバルな問題となっています。国際社会において法に基づかない実力の行使によって平和が破壊されている例は、枚挙にいとまがないでしょう。国際社会において自由と平和をいかに確保するか。私自身、ハーグ国際私法会議という国際機関のプロジェクトの議長をしていますが、世界各国の代表と条約草案の起草の議論をする際に、常に意識していることです。
一橋大学の法学部では、法学と国際関係学の双方から、この自由と平和を学ぶことができます。その学びの特徴は、やはり自由です。基本的に各人の好きな時期に好きな科目を履修することができるカリキュラムとなっています。また、一橋大学には学部間の垣根が低いという特色があり、法学部の柱である法学・国際関係学のみならず、学部を越えてさまざまな科目を学べるため、視野を広げた自由な学びが可能となります。さらに学生の多様性が尊重されています。多様性は人間の成長の源です。自分の能力や思考を高めるためには今の自分を柔軟に変化させる必要があり、自分とは異なる考えや価値観を持つ人との交流こそが変化の契機となります。3年次から始まるゼミナールでの多様な仲間との議論は、皆さんの成長にとって貴重なものとなるはずです。自由と多様性を重んじる一橋大学法学部には、皆さんが自由と平和を学んで成長することを支える環境が整っています。ぜひ優秀な皆さんに一橋大学の法学部で学んでいただき、自由と平和を適切に理解した良識ある社会人として、世界に羽ばたいていただきたいと考えております。(談)
学部概要
良識ある指導的市民としての役割を果たしていくために
法学部は、教育目標として、第1に、法律学・国際関係論の基礎知識及び思考方法を確実に習得させること、第2に、幅広い教養を系統的な視点から習得し、人間性豊かで学際的知識を身に付けた教養人を養成することを掲げています。
まず、なぜ法学と国際関係なのでしょうか。法は、現代の国家運営の骨格を成すものです。国の仕組みから始まって、人や物の動きや経済活動、犯罪への対処、さらには国の枠を超えた国家間の取り決めなど、生活のあらゆる場面でのルールを定めています。そして、そのようなルールは、たとえ日本国内の問題であっても、今や国際的諸関係を抜きにしては語れないからです。
教育目標の第1が示しているように、法や国際関係には、個別の紛争解決に役立つという側面があります。ルールを知り、それに従って適切に問題を処理する知識・能力は、複雑化する現代社会で重要性を増しており、単に専門家に任せておけば良いとは言えなくなっています。もっとも、個々の紛争の基礎に横たわる問題を知らなければ、本来的な解決には至らないでしょう。教育目標の第2は、このような側面にかかわるものです。学問として法や国際関係を学ぶことには、より広い視野から問題を把握し、世界を全体として展望する視座を獲得するという意味があります。法学や国際関係論は、正義を、あるいは平和と共生を目指すものであって、それは単なる知識の集積を超えた営みなのです。
世界は、先行きが見えにくい状況になっています。多くの人々が真摯な思考や責任ある判断をなくしているのではないかという指摘もみられます。そのような中で、法的な素養・国際関係の知見を豊かに備えた人が、良識ある指導的市民として果たす役割は、今後ますます大きくなっていくでしょう。一橋大学法学部は、その要請に応える人材を多数育成してきましたし、そのような誇りある地位を今後さらに高めていきたいと考えています。
卒業生から
美しいキャンパスで、社会の当事者として思索する時間を
『大学案内2026』より
松田 和輝
2017年 法学部卒業
トヨタ自動車株式会社
渉外部 海外渉外室
高校1年の春、国立キャンパスで開催されたKODAIRA祭を訪れ、その美しい環境と熱心な先輩たちから大きな刺激を受けました。法律と国際関係への視座を高めたいという想いから、法学部を選択し、一心に勉強したことを覚えています。入学後は、学部を問わず多様な学生たちと交流しながら、法学および国際関係の基礎知識を身につけ、国際政治と安全保障領域でのゼミで学ぶ機会に恵まれました。在学中はBrexit、トランプ旋風などの変化点もあり、欧州やアジアの大学を合同ゼミとして訪問しながら「今起きている」現実の問題について、答えのない議論を行う機会に日々恵まれたと感じています。
卒業後はトヨタ自動車に入社し、海外渉外室での業務を通じ各国の政策渉外活動や官公庁とのパブリックリレーションを担当しています。2020年からは米国ワシントンDCオフィスに所属し、政治・外交の現場により近い観点で自動車産業の変化点に向き合う機会にも恵まれました。国際社会の変化点が続く中、日々当事者意識をもって取り組むことができるのは、在学中の学びが基盤となっていると感じます。
日本・世界各地にいる同窓たちとは今でも交流が続き、さらに刺激をもらっています。
一橋大学での日々を通じ、自分を形作る価値観が、豊かな仲間とともに培われました。これからも一人ひとりの学生生活が、かけがえのない財産となることを願っています。
美しいキャンパスで、人生の礎となる大事な時間を
『大学案内2025』より
齋藤 詩織
2016年 法学部卒業
ゴールドマン・サックス
アセット&ウェルスマネジメント部門
私が初めて一橋大学を訪れたのは、高校1年生夏のオープンキャンパスでした。美しいキャンパス、そして小人数だからこその卒業生の強固なネットワーク、教授との密なコミュニケーションなど他に類を見ない環境に魅力を感じ、そこから一心に受験勉強をしていました。そこから毎年オープンキャンパスを訪れ、ますます一橋大学で学ぶことに憧れを強めたことを強く覚えています。
3年次からは一橋大学の特徴でもあるゼミナールに所属し、そこで一生の恩師、仲間と出会うことができました。一学年7名程度と少人数で、真剣に仲間と意見を交わすだけではなく、ゼミ後は教授を交えてボードゲームをしたり食事に行ったりと、勉強だけではなく大切な人間関係を構築し、人生の礎となるかけがえのない時間になったと考えています。
私は新卒で外資系金融に入社し、現在は機関投資家に金融商品、運用戦略を提案するセールスとして働いています。日々変化する市場環境のなか、多くの人と関わりながら大きな仕事を成し遂げるのは厳しいながらも非常にやりがいがあり、大学時代に培った人間関係や価値観に助けられながら働いています。
一橋大学で過ごす時間は、卒業後も素晴らしい人間関係や価値観をもたらし、皆様の人生でかけがえのない財産となるものと思います。