ゼミ紹介

『大学案内2020』より

菊谷ゼミ「社会学・社会学史・社会思想」
社会って? わからないから 一人では

菊谷 和宏  教授

菊谷 和宏 教授

1991年一橋大学社会学部卒業。同大学院社会学研究科に進み、博士号(社会学)取得。和歌山大学教授等を経て、2016年より現職。専門は社会学・社会学史・社会思想。主な著書に『「社会(コンヴィヴィアリテ)」のない国、日本』(講談社)、訳書にE.デュルケーム『社会学的方法の規準』(講談社)がある。

ゼミ風景

私たちのゼミは、〈社会学する〉ゼミです。〈社会学する〉とは、ここでは、「社会についての思想や理論を歴史的に学び、社会を解明する学問の創造に参与する」ことを意味しています。
チームワークを要求される分野ではありませんので、ゼミ生の研究対象はさまざま、問題意識もそれぞれです。そうした多様性に満ちたゼミにあって、それでも強いて全体を貫く問題関心を挙げるとすれば、それは「社会とは何か」「社会で生きるとはどういうことか」というものでしょう。こうした社会科学の根底に関わる問いを、先人に学びながら真摯に議論しています。それは同時に、ゼミ生が自分自身の人生を問い直す作業となり、結果として各自が各自の〈自分〉に気付き、〈自分〉に適した職種に向けて卒業してゆきます。
ゼミの具体的な進行は、この分野の伝統的なスタイルを踏襲しています。つまり、まずは社会学史上の古典的文献を輪読します。これまでは主にデュルケームの著作(『社会分業論』『自殺論』など)を、時間を掛けてゆっくりと読んできました。これを半年以上続けた後、各自の問題関心に従って具体的な題材を選んで数度研究報告、その積み重ねの上に卒論作成、という流れです。今までのところ、コント、ジンメル、シュンペーターなど社会学・社会科学の古典を対象に選んだ人が多かったように思います。
開講してまだ数年の若いゼミですから、伝統行事のような「固まったもの」は何もありません。毎年毎年、その時のゼミ生がその時の関心に応じて、無理のない範囲で何かを企画したりしなかったりしています。これまでには、目黒寄生虫館、防衛省、朝鮮大学校、平兵衛まつりなどに「遠足」に行きました。
今後も、ともに〈社会学する〉学生が集ってくれることを期待しています。


高橋 実香

高橋 実香

社会学部4年

菊谷先生のゼミは社会を扱うゼミです。メンバーはこの社会を生きる当事者である等身大の立場から、話し合いをします。内容は様々です。輪読する文献についてはもちろん、自身の生い立ちのこと、大学生活のこと。社会に関する問題意識や価値観を交換し、ゼミが終わった後は、いつも一人一人のことを少し理解できたような気持ちになります。この社会を生きる他者のことを知る。それこそが、社会を学ぶということなのではないかと考えています。
三、四年生は合同で、社会学の文献を輪読したり、卒論に向けて各自の関心に基づいた発表をおこなったりします。先生はその間、暖かく真剣に私たちに問いを投げかけてくれます。ゼミの雰囲気は、穏やかかつ自由な雰囲気です。
ゼミでは、複数の人と一つのことについてじっくりと深めることができます。それは、一人では到達することのできない幸せでかけがえのない場だと思っています。
2018年10月撮影

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