ゼミ紹介

『大学案内2021』より

経済学部 冨浦ゼミ「計量経済実証分析」
データを使って経済のメカニズムを探る

冨浦 英一 教授

冨浦 英一 教授

1984年東京大学卒業・通産省(現 経産省)入省、1992年MIT経済学Ph.D.、神戸大学教授、横浜国大経済学部長などを経て、2015年から一橋大学経済学部教授。「アウトソーシングの国際経済学」(日本評論社、2014年)で日経経済図書文化賞・エコノミスト賞を受賞。

ゼミ風景

ビッグデータやAIによって、過去の傾向から見かけ上で相関のある変数を見つけ出すことは機械にある程度は任せられる場面が増えてきました。こうした時代にあっては、何故なのかという因果関係を経済学も用いて解釈するストーリーを語るために検証可能な仮説を立てるスキルが求められていると思います。
そこで、当ゼミでは、個人、企業、地域について記録されたデータに統計学的手法を正しく応用して、政策の効果や外部環境の変化の影響を定量的に推定する能力を身に付けることを目指しています。そのため、世界で広く採用されている標準的な応用計量経済学の教科書の勉強から始めます。次に、国際学術誌に最近掲載された専門的論文を、自分で似た分析をする身になってデータをどう扱うのか読み込みます。それから、自分でテストできる仮説を立て、必要なデータを収集・分析して、推定結果に解釈を加えて卒論にとりまとめ、他のゼミと合同の発表会でプレゼンするという一連のトレーニングを積みます。
私自身は日本の企業・産業のミクロ統計データを用いたグローバル化に関する計量実証分析を続けていますが、学生にはデータを用いた計量分析の枠内であれば自由にトピックスを選んでもらっており、実際に学生の卒論テーマは多岐にわたります。ただ、検証する仮説は明確になっているか、どの統計的手法をどう応用するのか、自分の研究はどのような意義があるのかについては、きちんと自分の言葉で説明できることを求めて質疑を重ねます。実証分析の手法は、統計学の基本こそ普遍的ですが、誤差にまみれた具体的なデータをさわっていく中で学生同士や教員と現実的な解決策を議論しながら体得していくものです。この意味で、ゼミの少人数双方向型のスタイルは好適です。こうして頭にしみ込んだスキルは、大学を卒業した後も、社会の様々な場面において自分で考えるために重要な基本であると信じています。


尾方 琳

尾方 琳

経済学部4年

私の所属する冨浦ゼミでは、統計学や経済学の知識を用いて世の中の様々な事象を分析する、計量経済学を学んでいます。ゼミでは各学生が関心のあるテーマについて経済学の観点から分析をし、先生や他のゼミ生と議論をしながら論文を書いています。そのため、冨浦ゼミの学生の研究テーマは多岐にわたります。私はイノベーションについて分析していますが、古文書を使う人や、お菓子業界について分析する人もいます。テーマは違っても、どうしたら統計的に分析できるかを全員が考え抜いていて、非常に刺激を受けます。また、これまでの研究では解明されていない問題に取り組む難しさと楽しさは、ゼミで学ぶ醍醐味だと思います。
さらに、授業以外でも、みんなで旅行をしたり、大阪市立大学・神戸大学との合同ゼミ(三商ゼミ)に参加したりする中で、ゼミ生や先生と親睦を深めています。こうした繋がりは、卒業後も続くかけがえのない財産になると思います。
2019年10月撮影

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