経済学部 産業組織論/岡室博之ゼミ

(『HQ』2018年春号より)

岡室博之教授

岡室博之教授

自ら課題を発見し、自ら解決する能力を鍛える経済学

経済学部と聞くと、「理論」を中心に学ぶ印象が強い。もちろん、二大理論といわれるミクロ経済学やマクロ経済学を理解することは、経済学部の学生であれば基本中の基本である。とはいえ、学んだ理論が企業活動や消費者行動など「現実」にどう活きるのか、気になる人も多いだろう。
今回クローズアップする岡室ゼミで取り組む「産業組織論」は、いわば理論と現実をつなげる経済学。そして、興味深いのはゼミ活動を通じて身につける力である。自ら課題を発見し、取り組み方を考え、解決する能力を磨くことに重きを置いている。

実際のケースに基づき、データを用いて現実を分析し、「理論と現実の接点」を見る

産業組織論とは、産業や企業にフォーカスして経済分析を行う学問のこと。どのような経済活動が行われ、それによって消費者がどのような影響を受けるのか。産業や企業の動きを分析するために、計量経済学のフレームワークを使うことも岡室ゼミの特徴である。起きている経済現象と背景にある要因の因果関係を、数量モデルとして把握。実際のデータに基づいて問題の構造を推定し、自ら立てた仮説を検証しながら事実を解き明かしていく。すると見えてくるのが、理論と現実の接点だ。指導にあたる岡室博之教授に、ゼミ活動の内容について話を聞いた。
「企業に関する実際のケースに基づいて理論をつくり、企業の生のデータを用いて分析することが多く、そこが産業組織論の面白いところでもあります。ただし、産業組織論で対象になるテーマは、独占と規制、垂直統合、製品差別化、広告戦略、M&Aなどさまざまですが、学生の研究対象は基本的には自由。研究テーマの選択は学生に委ねています。計量分析の手法についても、高度な統計分析ツールや参考書などを紹介し、ゼミでも基礎から学びますが、実際に自分でいろいろやってみることが大事です。たとえ分析結果が予想と違ったとしても、データや分析モデルを見直し、なぜそうなったかをよく考えることが重要です。それが、面白い発見につながるかもしれません。私が学生に身につけてもらいたいのは、自ら課題を発見し、取り組み方を考え、解決する能力です」
ゼミが行われるのは週に1回。3年次は、理論的な基盤と分析方法を身につけることに目標を置いている。春夏学期は産業組織論と計量経済分析に関する日本語文献を輪読。秋冬学期からは英語の専門論文を読み進め、またグループ研究を行う。いずれも全員が前日までにレジュメ(要旨)を提出し、それをもとに議論をするという流れだ。

ゼミ風景1

ゼミ風景2

ゼミ風景3

理論と現実をつなげる経済学を学ぶことにより、自ら課題を発見し、取り組み方を考え、解決する能力を身につける

指導方針は、「よく学び、よく遊べ」

岡室ゼミには、毎年開催されている行事がある。他大学との交流ゼミ(インゼミ)だ。
「3年次にオリジナルなテーマを自分たちで見つけて実証分析に取り組むので、それが4年次に作成する卒業論文のいわば予行演習になります。成果発表会に向けて研究を進めますが、競う相手がいることはプレッシャーになり、励みにもなる。うまく行かなくてもそこから得るものが大きいから、どんどんチャレンジしなさい、と学生には話しています」
ハードな毎日を連想する岡室ゼミだが、どの学生もモチベーションは高い。岡室教授の印象を尋ねると、「厳しいですがやりがいを感じる」「情熱的で教育熱心な先生」「話が分かりやすくて面白い」といった答えが返ってきた。ゼミが終われば毎回一緒に食事に行き、年2回の合宿では海水浴やスキーも楽しむという。最後に、岡室教授に指導方針を尋ねてみた。
「勉強に終始するゼミ活動にはしたくありません。ゼミは人が交流する場であり、人間関係や人格を形成する機会でもあると考えています。そこで掲げているのが、〝よく学び、よく遊べ〟というスローガン。何事も真剣に全力で取り組むことが大切で、そうすれば必ず実になるという想いを込めています」

ゼミ集合写真

ゼミ合宿写真

Student's Voice

理論と現実、両方を学べるゼミを探していました

小栁雄也さん

小栁雄也さん

経済学部3年

岡室ゼミを選んだきっかけは、2年次に岡室先生の授業を受けたことでした。産業組織論でロジックを学び、計量経済学で分析メソッドを身につける。つまり、理論と現実をつなげる両方の学問を学べることに惹かれて選びました。仮説を立て、事象を解き明かす際には、エビデンス(根拠)が鍵になります。データを鵜呑みにせず洞察することの大切さは、文部科学省のインターンシップに参加した時にも感じました。計量経済学はエビデンスをつくるツールになるので、とても実践的な学問だと思います。(談)

熱い先生や優秀な仲間から、得られる刺激が成長のモト

島津結美さん

島津結美さん

経済学部3年

岡室ゼミの魅力は、刺激を与えてくれる環境にあると思います。先生の熱い指導や、優秀な仲間との学び合いが、自分を成長させてくれています。3年次には、4年次の卒業論文に備えてスキルを磨く他大学との交流ゼミがあります。私たちのグループが取り組んでいるのは、「東京都の市区における待機児童発生要因についての分析」です。改善プランの提案を目標に、試行錯誤を重ねています。こうした活動ができることも魅力の一つです。学んだことが証しとして残り、人にも誇れる。大学生活の後半2年間が充実することは間違いありません。(談)

解き明かしたい疑問が、たくさんある人ほど楽しめます

瀧澤修人さん

瀧澤修人さん

経済学部4年

岡室ゼミの魅力は、刺激を与えてくれる環境にあると思います。先生の熱い指導や、優秀な仲間との学び合いが、自分を成長させてくれています。3年次には、4年次の卒業論文に備えてスキルを磨く他大学との交流ゼミがあります。私たちのグループが取り組んでいるのは、「東京都の市区における待機児童発生要因についての分析」です。改善プランの提案を目標に、試行錯誤を重ねています。こうした活動ができることも魅力の一つです。学んだことが証しとして残り、人にも誇れる。大学生活の後半2年間が充実することは間違いありません。(談)

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