法学部 ケンブリッジ大学合同ゼミ・ソウル大学校合同ゼミ

(『HQ』2017年春号より)

大林一広准教授

大林一広准教授

海外の学生と語り合い、世界を実感。国際感覚と社会人基礎力を磨く

グローバリゼーションの波が及んでいるのは、ビジネスや経済に限った話ではない。良好な国際関係を築いていくためには、法律や政治の分野においても世界を視野に入れた専門的な素養や洞察力を持つ人材が求められる。
一橋大学の法学部では、法学コースと国際関係コースという二つの専門教育を柱にしながら、優れた国際感覚を持つ人材教育に力を注いでいる。その象徴的な教育プログラムの一つが、ここで紹介する「ケンブリッジ大学合同ゼミ」「ソウル大学校合同ゼミ」だ。海外で国際関係を学ぶ同世代の学生と、互いに研究成果を発表し、世界で起きているさまざまな問題について議論を深めていく。まさに〝世界を実感できる〟授業といえるが、合同ゼミでの取り組みを通じて得られるものは、単なるグローバル体験にとどまらない。

2017年度から法学部GLPがスタート

ケンブリッジ大学との合同ゼミの参加者で集合写真

一橋大学では、全学的にグローバル人材養成に力を注いでいるが、そうしたプログラムに加え商学部、経済学部が他学部に先行してGlobal Leaders Program(GLP)を進めてきた。そして2017年度からは法学部でもGLPが始まる。法学部GLPの中核をなすのが、世界5か国・地域(韓国、台湾、中国、英国、ベルギー)の大学と合同で行われ、学生同士がゼミナール形式で学び合う〝GLP国際セミナー〟だ。これは一時的に開催されるイベント的プログラムではなく、授業科目(1か国の合同ゼミに参加することで2単位を取得できる)の一つとして行われる点でも注目に値する。ここで紹介する二つの合同ゼミは、このセミナーのスタートに先立って開講されるパイロット授業という位置づけだ。
合同ゼミは、法学部で教鞭を執るさまざまな教員が長年培ってきた国際的な研究ネットワークがベースになっている。それをゼミ横断という形式に発展させたのが合同ゼミである。開催の狙いについて、プログラムに広く携わった大林一広准教授に話を伺った。
「一番の狙いは世界を実感することにありますが、養われる力は多岐にわたります。同じ学問領域に立つ海外の多様な学生が何を考え、どのようなレベルの専門知識や語学力などを持つのか。合同ゼミを通じて知ることになり、それをきっかけに問題意識が高まり、自分に足りない力や視野の狭さ、考えの偏りにも気づきます。そして、議論の中で対等に意見を述べることができれば、大きな成功体験や自信として刻まれるでしょう」

ケンブリッジ大学との合同ゼミの様子1

ケンブリッジ大学との合同ゼミの様子2

合同ゼミの様子。世界トップレベルの大学の学生と学び、世界を実感。自分の弱み・強みにも気づくことができる。

いかにインプットし、アウトプットできるか。全プロセスが卒業後に活きる

合同ゼミ自体は、互いの大学キャンパスで行われ1、2日間ほどのプログラムで、研究成果の発表や議論を行うアウトプットの場だ。しかしそれは、同時に現地の学生たちから刺激を受ける、あるいは一橋大学の学生が相手校の学生に刺激を与えるといった、同世代の学生たちが化学反応を起こす機会でもある。
「相手は世界トップレベルの大学ですから、プレッシャーを感じる学生も少なくありません。ですから、事前準備の段階から必死です。時には〝こんな発表内容では意味がないのでは?〟といった厳しい意見もぶつけ合い、率先して内容のブラッシュアップを図る。メンバー同士で連携し、合同ゼミ当日に向けて計画を立てながら準備を進める。当然、英語による発表の練習も何度となく行います。合同ゼミ当日までに、へとへとになっている学生もいます。ただ、一旦先方の学生と話をし出すと、皆とても生き生きとしてきます。自分たちの主張や先方に対して持っていた認識が、対話を通じて、良い意味で裏切られていく。そんなプロセスを皆楽しんでいるように見えます」
ちなみに、合同ゼミの企画・運営や実施に伴う大学間での連絡や相(談)、渡航する際のチケットの手配なども学生主体で行われるという。将来、国際会議への参加や開催に携わった時に必要なことが、すべて経験できる教育プログラムといえるだろう。
問題意識、論理的・批判的思考、プレゼンテーション力、計画性、調整力......。合同ゼミで養われる力は、卒業後を見据えたものと語る大林准教授。それはグローバルに活躍するうえで欠かせない社会人基礎力でもあり、活かせるステージは多岐に広がるはずだ。

ソウル大学校との合同ゼミの様子1

ソウル大学校との合同ゼミの様子2

ソウル大学校との合同ゼミの様子3

合同ゼミは、研究成果の発表・議論を行うだけでなく、企画・運営や各種の手配なども学生主体で実施。
だからこそ得られる経験もスキルも多い。

Student's Voice

世界中の優秀な学生と対等に闘えた自分に、自信を持ちました

六本木彩香さん

六本木彩香さん

ケンブリッジ大学合同ゼミ参加者
法学部3年

留学経験もなく、体育会での活動が忙しかった私にとって、合同ゼミは海外で学べる絶好の機会でした。多国籍の学生たちが集うケンブリッジ大学で学んで感じたことは、そこで学ぶ学生たちの間では議論する文化が根づいており、自己主張を躊躇しないということです。現場の学生たちから多くの刺激を受けました。合同ゼミは"Brexit(英国のEU離脱)"をテーマに開かれ、日本研究に取り組む学生グループと議論しました。圧倒されたのは、一人ひとりが明確に自分の意見を持っていることや、問題意識の高さです。しかし一方で、国際政治や教育行政といった自分の専門分野に話が及べば、対等に議論ができました。語学力さえ磨けば、世界と闘える。そんな自信を持ちました。(談)

一番の魅力は、自分とは異なる視点を知り、深く語り合えること

橘 茉歩さん

橘 茉歩さん

ソウル大学校合同ゼミ参加者
法学部4年

昨年に続いて2回目の参加になりますが、今年は、準備段階からソウル大学校の学生たちと調整を重ねてきましたので、特別な思いがありました。合同ゼミの魅力は、同一のテーマでディスカッションができることです。今年は"TPP""慰安婦問題""世代間格差"という3テーマ。そこから自分が取り上げたいテーマを選び、議論に臨みました。深く掘り下げて語り合えることは、まさにグローバルを体験できる貴重な機会でした。テーマの決定→グループごとに調査・情報収集→中間報告→発表内容のブラッシュアップと、合同ゼミ当日まで3か月以上にわたって準備を行いますが、そのプロセスの中で磨けるスキルや資質は語り尽くせません。卒業後はいつか教育開発の分野に携わりたいと思っており、この体験が活きればと思っています。(談)

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