商学部 1・2年次ゼミ

(『HQ』2018年春号より)

高見澤秀幸准教授

高見澤秀幸准教授

「読む・書く」「考える・伝える」という将来に活きる基礎力を徹底トレーニング

一橋大学の伝統であるゼミナール。3・4年次になると自分の専門性を高める研究活動に勤しむが、商学部では1・2年次にもゼミナール教育を導入し、必修化している。通常の授業科目で学ぶのは、経営・マーケティング・会計・金融・ビジネスエコノミクスなど、商学部が扱う分野の基礎知識。それに対して、ゼミでは卒業後に目指すフィールドにかかわらず必要となる、リテラシー能力を身につけるのが特徴だ。

日本語で学び、英語で学ぶ2年間で、徹底的に鍛える「読解力」と「文章力」

1年次の「導入ゼミ」では、将来も見据えた学びの基礎力「読む・書く」「考える・伝える」を鍛える。そして2年次の「前期ゼミ」は、英語の文献から専門知識を得るためのトレーニングという位置づけ。目的は、「英語を学ぶ」から「英語で学ぶ」へと学習の姿勢を転換させることにある。
具体的にどのような取り組みが行われているのか、高見澤秀幸准教授が開講するゼミを訪ねてみた。
「私のゼミでは、人間の行動・心理が経済・経営に与える影響をテーマとして学習します。課題図書の要約・レポート作成が主な取り組みですが、そのプロセスを通じて鍛錬してもらうのが読解力と文章力です。このことは2年間を通じて変わりません。異なるのは、1年次は日本語で、2年次は英語で学ぶという点です。大事なことは、言語にかかわらず、著書のコアメッセージを的確にとらえること。そう学生に話しながら指導しています」
高見澤准教授には、読解力と文章力を養うために取り入れている工夫がある。課題図書を読んだうえで、賛成点・反対点・疑問点の三つを挙げることだ。それを1枚のレポートとして簡潔に書きまとめて参加することが、高見澤ゼミのルールとなっている。
「特に1年次は、レポートの書き方を徹底的に指導します。英語で学ぶ2年次や、さらに自分の専門性を高める3年次からのゼミにも、スムーズに入っていける礎になるはずです」

ゼミ風景1

ゼミ風景2

ゼミ風景3

課題図書を通じて知見を増やし、取り組みのプロセスを通じて卒業後に必要となるリテラシー能力を身につける

課題図書を通じて「知見」を増やし、自分の見解を「立証する力」に変える

ここで、参考までに2017年度に取り上げられた課題図書のタイトルを紹介しよう。1年次の春夏学期は、人間の意思決定がいかに不合理かを考察した行動経済学の入門書『予想どおりに不合理』。秋冬学期は、企業で度重なる不祥事が起きる中で、会計や金融など経営を多面的に考察できる専門書『コーポレート・ガバナンス』がピックアップされた。そして、洋書を取り上げる2年次の春夏学期は、人間心理と行動決定の関係について解説した『エモーショナル・ファーストエイド』。1・2年次ゼミの集大成となる秋冬学期は、マクロ経済や資産市場に与える心理的影響を説いた『アニマルスピリット』が選ばれた。
「さまざまな観点からアプローチされた専門書を教材とすることで、知見を増やすことができます。そして学生には、他者と議論したことを自分の見解に集約させる立証力も養ってもらいたいと考えています」
高見澤准教授がゼミで心掛けているのは、発言の機会を均等に与えること。学生全員にまんべんなく、そして主体的に楽しく意見を出せるように、トランプを利用してランダムに発言者を決めている。
「ゼミでの取り組みでは努力も相当必要ですが、理解が追いつかなくても参加しなさいと学生には話しています。人の意見を聞くだけでも役立つはずだからです。通常の授業とは違い、双方向でコミュニケーションをとるので、分からないことも分かるようになる。それも1・2年次ゼミのメリットだと思います」

ゼミ風景1

ゼミ風景2

Student's Voice

ゼミ形式で学ぶメリットや魅力は、語り尽くせません

竝川千裕さん

竝川千裕さん

商学部1年

入学して実際にゼミで学んでみると、そのメリットは想像以上にたくさんありました。
まず、少人数で学べること。先生から直接指導を受けられますし、一人ひとりにフィードバックがあるので、身につくスピードが速いと思います。また、頭を使い続けるトレーニングにもなっています。先生の講義を聴くだけではなく、自分の見解を発信するからです。一方で、ディスカッションや発表の機会には、他の学生の見解や物事のとらえ方に触れることになるので、視野が広がりますし知見も増えます。ゼミ活動を通じて仲間意識が芽生え、協働する力も養われました。みんなで授業をつくり上げていく楽しさがあり、1年次からスタートするので友だちをつくる場としても有効です。
魅力を挙げたらキリがなく、ゼミの時間は本当に好きですね。課題図書の要約やレポート作成は労力を伴いますが、やればやるだけスキルがアップする実感があり、やりがいを感じています。
商学部に入学したのは、企業の経営戦略に興味があり、将来に役立つ理論を学びたいと思ったから。2年次ゼミや、自分の専門性を高める3・4年次のゼミに対して、期待がさらに膨らみました。(談)

読解力や文章力はもちろん、議論する力も身につきました

三木原里穂さん

三木原里穂さん

商学部2年

一橋大学の商学部に入学したのは、企業経営やマーケティングに興味があり、社会に出た時に役立つ実践的な勉強がしたいと思ったからです。そして、心理学からのアプロ-チで経済活動を考えるというテーマに惹かれて高見澤ゼミを選びました。
課題図書を事前に要約し、賛成点・反対点・疑問点を1枚のレポートにまとめたうえでゼミに参加するので、読解力や自分の見解を簡潔な文章にまとめる力が自ずと上がりました。2年次ゼミでは、英語で書かれた専門書を毎週1章ずつ読み進んでいきます。日本語で書かれた専門書でも簡単には進まないものですが、良い意味で強制的に英語に慣れることができますし、3年次から始まる専門ゼミの予行演習にもなっています。
私が一番成長したと感じているのは、ゼミでみんなと議論する力です。相手の意見をそのまま受け入れるのではなく、さまざまな角度から検討して客観的に理解する批判的思考法が身につきました。あらゆる意見を聞くことで、議論する際の視点も増えたと感じています。
英語力を高めることが目的ではなく、英語で学ぶことに意味があると思いますし、頑張れば頑張るほどレベルアップするのでモチベーションが上がります。(談)

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